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OTBI(サブジェクト領域・分析・ダッシュボード)

Oracle Transactional Business Intelligence(OTBI)は、Fusion の取引データを、組込みの分析やアドホック分析で照会する仕組みです。データウェアハウスにコピーせず、実行時に業務テーブルを照会 するため、登録した直後のデータが見えます。

処理の流れは次のとおりです。

OTBI のクエリ処理
利用者が列とフィルタを選ぶ(分析エディタ)
→ 論理 SQL(サブジェクト領域・フォルダ・列で書かれた SQL)
→ BI Server:メタデータ(サブジェクト領域 ↔ ADF ビューオブジェクト ↔ テーブル)で物理 SQL を生成
→ Fusion のデータベースで実行(データセキュリティの条件もここで付く)
→ Presentation Server:表・グラフに整形して表示

OTBI で扱う主なオブジェクトは次のとおりです。

オブジェクト 内容
分析(Analysis) 列・フィルタ・ビュー(表、ピボット表、グラフ)の組合せ。業務上の問いに答える単位
ダッシュボード(Dashboard) 分析やレポートを 1 つの画面にまとめたもの。複数ページを持てる
ダッシュボード・プロンプト ダッシュボード全体の絞り込み条件を利用者に入力させる部品
フィルタ(Filter) 分析の結果を絞り込む条件。分析内の条件と、再利用できる名前付きフィルタがある
エージェント(Agent) 分析などをスケジュールで配信・通知する仕組み

BI Server やカタログ管理ツール(Catalog Manager)、管理ツール(Administration Tool)といった OBIEE の管理コンポーネントは、Fusion の OTBI では利用者に開放されていません。サブジェクト領域の定義(リポジトリ)を利用者が変更することはできず、拡張はフレックスフィールドの BI 有効化で行います。

サブジェクト領域は、業務オブジェクトや事実(ファクト)を中心に列をまとめたものです。名前の末尾の Real Time は、リアルタイムに取引データを照会することを表します。

構成要素 内容 例(Payables Invoices - Installments Real Time)
ファクト・フォルダ 集計できる数値(メジャー)を持つ。サブジェクト領域に 1 つ Invoices Installment Amounts(Unpaid Amount、Gross Amount など)
ディメンション・フォルダ 説明的な属性や階層を持つ。ファクトに結合されている Invoices Installments Details(Due Date、Bank Account Number など)
共通フォルダ 複数のサブジェクト領域に共通するディメンション Time など

Financials のサブジェクト領域は、Assets、Budgetary Control、Cash Management、Expenses、General Ledger、Intercompany、Payables、Receivables、Revenue Management、Subledger Accounting の各領域に分かれています。たとえば Payables には次の 7 つがあります。

  • Payables Invoices - Installments Real Time(支払予定・未払額)
  • Payables Invoices - Prepayment Applications Real Time(前払金の充当)
  • Payables Invoices - Transactions Real Time(請求書の明細・配分)
  • Payables Invoices - Trial Balance Real Time(AP 試算表)
  • Payables Invoices - Withholding Real Time(源泉徴収)
  • Payables Payments - Disbursements Real Time(支払)
  • Payables Payments - Payment History Real Time(支払履歴)

公式のサブジェクト領域リファレンスには、サブジェクト領域ごとに「答えられる業務上の問い」「必要なジョブロール・職務ロール」「データの粒度(どのテーブルの 1 行が 1 行になるか)」が載っています。たとえば Payables Invoices - Installments Real Time の粒度は支払予定(AP_PAYMENT_SCHEDULES_ALL)で、時間ディメンションは請求書日付(Invoice Date)に結び付いています。粒度を確認してから列を選ぶ と、意図しない重複集計を防げます。

複数のサブジェクト領域をまたぐ分析

Section titled “複数のサブジェクト領域をまたぐ分析”

1 つの分析で複数のサブジェクト領域を使うこともできます。公式ドキュメントのルールは次の 2 つです。

  1. ディメンションの列は、すべてのサブジェクト領域に共通するフォルダ の列だけを使う(最低 1 列は必要)
  2. 各サブジェクト領域のファクト・フォルダから 1 列ずつ 含める

ルールを外れると、エラーや意味のない結果になります。横断分析は性能面でも重くなるため、必要最小限にします。

GL の残高系サブジェクト領域には、Essbase の GL 残高キューブを照会するもの(General Ledger - Balances Real Time)と、残高テーブルを照会する取引残高系のものがあります。どちらを使うかで、使えるディメンションや階層、性能が変わります。財務諸表そのものは Financial Reporting Web Studio で作るのが基本です。

分析エディタでの基本手順は次のとおりです。

  1. Classic Home(https://<your-pod>.fa.<region>.oraclecloud.com/analytics)の Create ペインで Analysis をクリックします。Fusion の画面からは、ナビゲータ > Tools > Reports and Analytics の Browse Catalog でカタログを開いて作成できます。
  2. Select Subject Area ダイアログでサブジェクト領域を選びます。
  3. Criteria タブで、Subject Areas ペインから列を Selected Columns ペインへドラッグします。Ctrl キーで複数列をまとめて選べます。
  4. 必要に応じて列のプロパティ(見出し、書式、条件付き書式)や計算式を設定します。
  5. Filters ペインでフィルタを追加します(次の節)。
  6. Results タブで結果(表・ピボット表)を確認し、グラフなどのビューを追加します。
  7. 保存します。他の人と共有するなら共有フォルダ配下(/Shared/Custom/...)、自分だけなら My Folders を選びます。

Reports and Analytics 作業領域の Create > Analysis からは、ウィザード でも作成できます。ウィザードは Select Columns → Select Views(表・グラフ)→ Edit Table/Edit Graph → Sort and Filter → Highlight → Save の順に進みます。グラフや強調表示には、ファクト・フォルダの列が最低 1 つ必要です。

  1. Classic Home の Create から Dashboard を選び、名前と保存先フォルダを指定します。
  2. ダッシュボード・ビルダーで、カタログから分析・レポート・プロンプトをページにドラッグします。
  3. 必要に応じてページを追加し、ページ間のリンクや印刷の設定を行います。
  4. 保存して、共有フォルダのフォルダ権限で公開範囲を管理します。

ダッシュボードには OTBI の分析だけでなく BIP のレポートも配置できます。業務ユーザーにとっての「入口」を 1 つにまとめられるのがダッシュボードの価値です。

種類 作り方 使いどころ
インライン・フィルタ Selected Columns の列の Options > Filter、または Filters ペイン その分析だけで使う条件(通常はこちら)
名前付きフィルタ Home の Create > More > Filter 複数の分析・ダッシュボードで再利用する条件
保存済み分析によるフィルタ 別の分析が返す値の一覧で絞り込む 「条件に合う仕入先だけ」のような 2 段階の絞り込み

フィルタを 2 つ以上置くと、既定では AND で結合されます。AND の文字をクリックすると OR に切り替わります。Protect Filter を選ぶと、プロンプトの値で上書きされなくなります。Convert this Filter to SQL を選ぶと、条件を SQL 式で直接記述できます。

フィルタは 選択ステップ(Selection Steps)より先に 適用されます。「上位 10 社」のような選択ステップは、フィルタで絞った結果に対して働きます。

プロンプトは、実行時に利用者が条件を選ぶ部品です。分析の中に置く 列プロンプト(分析プロンプト) と、ダッシュボードに置く ダッシュボード・プロンプト があります。プロンプトとフィルタのつながり方は次のとおりです。

  1. 自動結合(Auto wiring):分析に列プロンプトを追加すると、その列の保護されていないフィルタに値が自動で渡ります。
  2. is prompted 演算子:フィルタの演算子を is prompted にすると、「この列はプロンプトの値で絞る」と明示できます。ダッシュボード・プロンプト、分析プロンプト、フィルタの関係を細かく制御したいときに使います。
  3. 制約付きプロンプト:複数列のプロンプトで、前の選択に応じて後の選択肢を絞ります(例:地域を選ぶと、その地域の都市だけ表示)。
  4. 保護されたフィルタ:フィルタが保護されていて、演算子が is prompted 以外(is equal to / is in など)の場合、ダッシュボード・プロンプトは結果を変えられません。

階層列にはフィルタを使えないため、階層列をプロンプトで絞る場合は 選択ステップをプロンプトで上書き する方法を使います。

OTBI の分析は、内部では 論理 SQL で表現されています。論理 SQL は、物理テーブルではなく、FROM 句にサブジェクト領域を書き、列を "フォルダ"."列"(先頭にサブジェクト領域名を付けた 3 段階の形も可)で指定する SQL です。分析エディタの Advanced タブで、分析が発行する論理 SQL を確認できます。

論理 SQL の例(未払額を支払期日別に集計)
SELECT
"Invoices Installments Details"."Due Date" s_1,
"Invoices Installment Amounts"."Unpaid Amount" s_2
FROM "Payables Invoices - Installments Real Time"
WHERE "Invoices Installment Amounts"."Unpaid Amount" <> 0
ORDER BY 1

論理 SQL を読めると、次の場面で役立ちます。

  1. 結果がおかしいときの切り分け:どの列・条件で絞っているか、集計の粒度は何かを確認できます。
  2. BIP との連携:BIP のデータセットに OTBI の分析を使うと、BI Server に対して論理 SQL が発行されます(物理 SQL ではありません)。
  3. フィルタの高度な記述:Convert this Filter to SQL で、論理 SQL の式としてフィルタを書けます。

OTBI は Fusion のセキュリティをそのまま使います。セキュリティは 3 層で考えます。

層 何を制御するか 例
機能(サブジェクト領域) どのサブジェクト領域を使えるか Payables Invoices - Installments Real Time には Payables Invoice Transaction Analysis Duty などの職務ロールが必要
データ どの行が見えるか 営業単位(BU)・元帳などのデータアクセス。OTBI も同じセキュリティで行が絞られる
カタログ どの分析・ダッシュボードを開けるか フォルダ・オブジェクトの権限、レポーティング職務ロール
  1. 機能:サブジェクト領域ごとに必要なジョブロール・職務ロールが決まっています(公式のサブジェクト領域リファレンスに記載)。カスタムロールを作るときは、業務の職務ロールと一緒に分析用の職務ロールも付与します。
  2. データ:Fusion Financials のデータセキュリティが OTBI にも適用されるため、同じ分析でも利用者によって見える行が変わります。分析を作った人と使う人で結果が違うのは正常な動きです。
  3. カタログ:共有フォルダのルートごとにレポーティング職務ロール(例:/Shared/Financials に対する BI_FIN_REPORTING_DUTY)が対応しています。

データが表示されないときは、まずロールの付与を確認します。公式のトラブルシューティングでも、ジョブロール・職務ロールと、分析および含まれるオブジェクトへの読取り権限を確認するよう案内されています。また、金額が 0 と表示される場合、元帳通貨と USD の間の換算レートが未設定、または換算に失敗していることがあります。

詳細は セキュリティの基本 と セキュリティ設計 を参照してください。

追加したフレックスフィールドを分析で使うには、BI 有効化と取込みが必要です。対象は ERP と HCM のフレックスフィールドです。

付加フレックスフィールド(DFF)

Section titled “付加フレックスフィールド(DFF)”
  1. 設定および保守(Setup and Maintenance)で Manage Descriptive Flexfields タスクを開きます。
  2. 対象の DFF を検索して編集し、BI Enabled を選択します。選択肢が表示されない DFF は、BI に対応していません(すべての DFF が BI に対応しているわけではありません)。
  3. グローバル・セグメント、コンテキスト・セグメントのうち分析に使うものを BI 有効にします。
  4. フレックスフィールドを デプロイ します。
  5. スケジュール済プロセス(Scheduled Processes)で Import Oracle Fusion Data Extensions for Transactional Business Intelligence を実行します。
  6. 処理が完了したら、分析エディタの Subject Areas ペインで Refresh し、該当フォルダに項目が出ていることを確認します。

どの DFF がどのサブジェクト領域・フォルダに現れるかは、公式ガイド(Creating and Administering Analytics and Reports for Financials)の「Financials Descriptive Flexfields for Business Intelligence」に一覧があります。

キー・フレックスフィールド(COA など)

Section titled “キー・フレックスフィールド(COA など)”

GL の会計フレックスフィールドは、セグメントを BI のディメンションに対応付けて使います。

  1. Manage Key Flexfields でキー・フレックスフィールドを検索し、Manage Structure Instances からセグメントの BI Enabled を選択します。
  2. Actions > Manage Segment Labels で、セグメント・ラベルに BI Object Name を設定します。修飾ラベルの対応は固定です(GL_BALANCING → Dim - Balancing Segment、GL_ACCOUNT → Dim - Natural Account Segment、FA_COST_CTR → Dim - Cost Center)。修飾なしのセグメントは Dim - GL Segment1〜10 に対応付けます。
  3. COA インスタンスにセグメント・ラベルを割り当ててから、フレックスフィールドをデプロイします。
  4. 階層で分析する場合は、Manage Trees and Tree Versions で勘定科目ツリー(ツリー構造コード GL_ACCT_FLEX)を有効化し、列のフラット化(Column Flattening) を実行します。フラット化しないと、階層を使う分析で正しい値が出ません。
  5. Import Oracle Fusion Data Extensions for Transactional Business Intelligence を実行します。

OTBI は実行のたびに業務テーブルを照会するため、作り方しだいで性能が大きく変わります。

  1. 必ずフィルタを付ける:期間・BU・元帳などで絞ります。プロンプトには既定値を設定し、「全件」で実行されないようにします。
  2. 列は必要最小限にする:ディメンションの列を足すほど結合が増え、粒度も細かくなります。使わない列は削除します。
  3. サブジェクト領域の横断は最小限にする:横断分析はクエリが複雑になります。1 つのサブジェクト領域で答えられないかを先に検討します。
  4. フィルタの列に関数をかけない:文字列の加工や型変換をした式で絞り込むと、データベース側で効率よく絞れなくなります。
  5. 大量明細は別の手段で出す:表示上限を超えると「Exceed configured maximum number of allowed input records」エラーになります。定型の大量出力は BIP のスケジュール実行、定期的なデータ連携は BICC を使います。
  6. 遅い分析は管理者とログを確認する:公式のトラブルシューティングも、分析に関連するログを管理者と確認して調整するよう案内しています。

カタログ(共有フォルダ/個人フォルダ)

Section titled “カタログ(共有フォルダ/個人フォルダ)”

カタログは、分析・ダッシュボード・レポート・データモデルなどを保存するフォルダ構造です。事前定義のコンテンツは「共有フォルダ > 製品ファミリ(例:Financials)> 製品(例:Payables)> レポートグループ」の階層で整理されています。

場所 用途 注意点
/Shared/Custom 配下 組織で共有するカスタムの分析・レポート アップデート後も保持される。フォルダ権限で公開範囲を管理
/Shared 直下の新規フォルダ 共有用(Custom 以外の独自フォルダ) 保持される。命名規則を決めて乱立を防ぐ
My Folders 自分だけが使う分析 他の人は見られない。異動・退職時に引き継ぎが必要
事前定義フォルダ(/Shared/Financials など) Oracle 提供のコンテンツ 変更不可。権限も変更できない。変更はアップデートで失われる

事前定義のコンテンツを編集しようとすると、/Shared/Custom に保存するよう求める警告が出ます。事前定義の分析を改修したい場合は、/Shared/Custom 配下に コピーして 修正します。カタログのコンテンツは アーカイブ(Archive)/アーカイブ解除(Unarchive) で退避・復元でき、環境間の移送にも使います。

事前定義フォルダの見え方を利用者ごとに変えたい場合は、フォルダ権限ではなく、Custom BI Web cat Reporting Duty をもとにしたカスタムロールで、どのレポーティング職務ロールを継承させるかを調整します。

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”

ベストプラクティスは次のとおりです。

  1. 事前定義の分析を先に探す:Oracle が公開している事前定義の分析・レポート一覧で、近いものを探してコピーします。
  2. フォルダ構成と命名規則を決める:/Shared/Custom/Financials/Payables/... のように、事前定義の階層に合わせると探しやすくなります。
  3. ダッシュボードは利用者の業務単位で作る:「AP 担当の月次締め」のように、使う場面ごとに必要な分析を 1 画面にまとめます。
  4. プロンプトの既定値を必ず設定する:既定値のないプロンプトは全件実行の原因になります。
  5. 四半期アップデート後に主要な分析を確認する:回帰テストの対象に含めます。
  • 対応する試験:GL 模擬テスト の財務レポート関連の分野。AP・AR の模擬テスト(AP、AR)でもレポートに関する知識が前提になることがあります。
  • サブジェクト領域・ファクト・ディメンション・共通フォルダの関係と、横断分析の 2 つのルールを説明できるようにします。
  • OTBI は Fusion のデータセキュリティを継承し、リアルタイムに照会すること(BIP の SQL との違い)を押さえます。
  • フレックスフィールドを分析で使う手順(BI Enabled → デプロイ → Import Oracle Fusion Data Extensions for Transactional Business Intelligence)を覚えます。
  • is prompted、Protect Filter、名前付きフィルタ、ダッシュボード・プロンプトの役割を区別します。
  • カスタムのコンテンツは /Shared/Custom に保存し、事前定義フォルダは変更できないことを押さえます。

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