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Fusion の AI と AI Agent Studio の全体像

公式の AI 機能一覧(Features with AI)では、機能ごとに種類(Type)が付いています。ERP の一覧を例にすると、次のように整理できます(26D 時点)。

種類 何をするか ERP の例(公式一覧より)
予測 AI(Predictive AI) 過去データを学習し、値の推奨や予測を行う Intelligent Account Combination Defaulting for Invoices(22D)、Predictive Cash Forecasting(25C)
生成 AI(LLM を使う機能) 文章の作成、要約、対話形式の Q&A AI Agent Studio の説明文の自動生成(Generate)など
AI エージェント(AI agent) LLM が手順を考え、ツールで Fusion のデータを読み書きしながら業務を進める Ledger Agent(26B)、Payables Agent for Invoice Ingestion, Compliance and Control(26D)
エージェント型アプリ(Agentic app) 複数のワークフローをまとめた業務用のワークスペース Project Planning Workspace(26D)、Agentic AI App: Security Command Center(26C)
  • LLM は Cohere・Meta・OpenAI などの複数のプロバイダのものが使われます。最新の対応モデルはサポート・ナレッジ(KB796229)で公開されます
  • 26D では、目的(アウトカム)を自然言語で指定すると、エージェントがアプリの機能を使って手順を決めて実行するFusion Clawが追加されました。統制された(governed)エージェント実行基盤という位置づけです
  • パートナーが作ったエージェントは Oracle Marketplace で公開されています

事前構築のエージェントは「使う」もの、AI Agent Studio は「作る・合わせる」ための道具です。実案件では、まず事前構築のエージェントやワークフローで要件を満たせるかを確認し、足りない部分を AI Agent Studio で拡張・新規作成します。この考え方は、標準機能を優先する Fit to Standard と同じです。

AI Agent Studio は Fusion Applications に組み込まれた開発環境です。外部の AI 基盤とつなぐのではなく、Fusion の中で次のことができます。

  1. 事前構築(Seeded)のワークフローを拡張する
  2. ワークフローとエージェント型アプリを新しく作る
  3. Fusion のナレッジ、ツール、API に安全にアクセスさせる
  4. 作ったエージェントを業務フローの中に直接デプロイする

公式ドキュメントが挙げる主な機能は 8 つです。

機能(英語名) 内容
Agent template libraries テンプレートと自然言語の指示から、エージェントとワークフローを作成・調整する
Workflow orchestration 複数のエージェントを連携させ、途中に人の承認を入れる
Agent extensibility 既存エージェントにデータソース、プロンプト、API を追加して拡張する
Agentic apps ワークフローとノードを組み合わせて、意思決定を支援するアプリを作る
Native integration with Fusion Applications Fusion の API・ツールに直接アクセスし、複雑な改修なしでデプロイする
Third-party system integration 外部システムや他社のエージェントと、安全な API で連携する
Trust and security framework Fusion のセキュリティ設定・ポリシー・アクセス制御を自動的に適用する
Validation and testing tools デプロイ前に AI の処理の流れを検証する

26C の公式ドキュメントは、AI Agent Studio の構成要素を次の 6 つで説明しています。

構成要素 役割 例
ワークフロー(Workflow) 1 つ以上のエージェントとノードが、決められた手順で業務タスクを処理する。デプロイできるのはワークフロー 書類選考・面接調整・オファー作成をする採用ワークフロー
エージェント(Agents) LLM で推論し、行動計画を立て、ユーザーと対話する。ワークフローに追加して初めてデプロイできる 会議招集を受け付け、代替日時を提案するスケジュール管理エージェント
トピック(Topics) 指示で専門領域を定義し、会話の範囲と制約を決める。エージェント間で再利用できる 福利厚生エージェントの「確定拠出年金」「持株会」
ツール(Tools) エージェントが使う道具。1 つのツールを複数のエージェントで再利用できる ビジネス・オブジェクト、ドキュメント、外部 REST
指示(Instructions) トピックに適用するルールを自然言語で書く。LLM へ送るプロンプトの一部になる 「分からない場合は回答を作らない」
テスト(Testing) ツール・トピック・指示の設定と、推論の過程や引用元を確認する 想定質問への回答と、その回答に至った過程の確認

エージェントには役割による種類があります。

  • ユーザー・プロキシ・エージェント(User-proxy agent):利用者の代わりに他のエージェントへ入力を渡す。会話型エージェントとも呼ばれる
  • スーパーバイザー・エージェント(Supervisor agent):複数のエージェントの使い分けを統括する
  • スペシャリスト/ユーティリティ・エージェント(Specialist or utility agent):特定の役割や特定のツールの扱いに特化する

2 つのパターン:ワークフローとスーパーバイザー

Section titled “2 つのパターン:ワークフローとスーパーバイザー”
パターン 動き方 向いている業務
ワークフロー・エージェント(Workflow Agent) 事前に決めた手順(ノードのつながり)どおりに処理する。決定的で、監査しやすい 経理・人事など、正確さと再現性が重要な業務
スーパーバイザー+エージェント(階層型) スーパーバイザーが依頼を解釈し、専門エージェントへ動的に振り分ける 経路が決めにくい、複数領域にまたがる対話

両者を組み合わせる方法(ワークフローの中にエージェントを組み込む)も推奨されています。公式ブログ(2026 年 9 月)では、新しいオーケストレーションはワークフローから作ることが勧められています。スーパーバイザーの振る舞いは、ワークフローの Multi Agent ノードの中で動かせます。既存のスーパーバイザーは Migrate 操作でワークフローへ変換できます(作り直しではなく変換)。

AI Agent Studio は「ナビゲータ > ツール > AI Agent Studio」(Navigator > Tools > AI Agent Studio)から開きます。公式ドキュメントで確認できた主なタブは次のとおりです。

タブ(英語 UI 名) 主な用途
Workflows ワークフローの作成・編集・デバッグ・公開・エクスポート/インポート
Applications エージェント型アプリの作成(Applications Builder)
Resources Agents、Supervisor Agents、Tools、Signals などの部品を管理するサブタブ
Credentials / Connectors 独自 LLM(LLM サブタブ)、Microsoft Teams・Slack・SharePoint などとの接続
Approvals / Policy 人の承認プロセス、ポリシー・モデル(規則による判定)
Monitoring and Evaluation 監視(Monitoring)、評価(Evaluation)、効果(Value)、トリガー実行の確認(Activities)
Marketplace 事前構築のスーパーバイザー・エージェントなど

AI Agent Studio の Ask Oracle 欄に作りたいものを自然言語で入力すると、ワークフローやエージェント型アプリの初期構成が生成されます(Workflows/Applications のタグで作る対象を選びます)。

1. 前提設定(セキュリティ管理者・導入担当が最初に行う)

Section titled “1. 前提設定(セキュリティ管理者・導入担当が最初に行う)”
  1. プロファイル・オプションを設定する
    • 「設定および保守 > 管理者プロファイル値の管理(Manage Administrator Profile Values)」で Enable Security Console External Application Integration(ORA_ASE_SAS_INTEGRATION_ENABLED)を検索し、サイトレベルを Yes にします。セキュリティ・コンソールで権限グループを扱えるようになります
  2. セキュリティ・データのインポート・ジョブを順番に実行する
    • 「ナビゲータ > ツール > スケジュール済プロセス > 新規プロセスのスケジュール」で、次の 2 つを 1 つずつ実行します
    • ① Import Resource Application Security Data → ② Import User and Role Application Security Data
  3. ビルダー・アシスタント用の索引ジョブを毎日実行する
    • Index AI Agent Studio Assistant Objects and Attributes(ワークフロー・エージェント・ツール・トピックなどを索引化し、アシスタントが部品を提案できるようにする)
  4. 監視・評価の集計ジョブをスケジュールする
    • Aggregate AI Agent Usage and Metrics(Monitoring and Evaluation タブの数値を集計する。例:1 日 1 回)

2. 作る人(ビルダー)のロール

Section titled “2. 作る人(ビルダー)のロール”

セキュリティ・コンソール(Security Console)でカスタム・ジョブ・ロールを作り、**権限グループを有効化(Enable Permission Groups)**します。Financials のエージェントを構成する場合は次の 2 通りがあります。

  • 方法 A:カスタム・ロールを作る
    • Role Hierarchy(ロール階層)ページの Roles and Privileges タブに ORA_FUN_MANAGE_FIN_AI_AGENT、ORA_FUN_MANAGE_FIN_AI_AGENT_HCM(Manage Financials Intelligent Agent)と ORA_CSO_CONNECTORS_AI_AGENT_MANAGEMENT_DUTY(AI Agent Connector Management)を追加します
    • Roles and Permission Groups タブに ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_FIN_ADMINISTRATOR_DUTY(Fai Genai Agent FIN Administrator Duty)を追加します
  • 方法 B:既存のジョブ・ロールを使う
    • Financial Application Administrator(ORA_FUN_FINANCIAL_APPLICATION_ADMINISTRATOR_JOB)を持つ利用者は、そのジョブ・ロールの権限グループを有効にして保存します

全製品のエージェントを構成する管理者には、CX・FIN・GRC・HCM・PRC・PRJ・PSC・SCM の 8 つの Fai Genai Agent <製品> Administrator Duty と、権限 Manage All Intelligent Agents(ORA_FAI_MANAGE_ALL_AI_AGENTS)を付けます。

用途に応じて、次の追加権限を付けます。

用途 追加するもの コード
外部 REST ツールを作る 権限 Create and Edit Backends for Visual Builder Studio ORA_FND_TRAP_PRIV
Teams・Slack のコネクタを作る 職務ロール Collab Tools Duty ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_COLLAB_TOOLS_DUTY
スケジュール・トリガーを使う 職務ロール Fai Batch Job Manager Duty ORA_DR_FAI_BATCH_JOB_MANAGER_DUTY
監視レコードを見る 権限グループ read:Generative AI Workflow Execution(セキュリティ・ビュー AllRowsRestrictedFields) —

3. 使う人(エンドユーザー)のロール

Section titled “3. 使う人(エンドユーザー)のロール”
  1. 権限グループを有効にしたカスタム・ロールを作る
  2. ファンクション・セキュリティ・ポリシーに Access Intelligent Agent Chat(HRC_ACCESS_AI_AGENT_CHAT_PRIV)を追加する
  3. Roles and Permission Groups タブに FAI GenAI Agent Runtime Duty(ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_RUNTIME_DUTY)を追加する
  4. そのカスタム・ロールを、全従業員が持つ共通のジョブ・ロールなどに割り当てる
  5. 各ワークフローの Settings > Security タブで、そのワークフローを使えるロールを追加する

ロール設計は、セキュリティ・コンソールで作業する前に設計書として残しておくと、テスト環境と本番環境で同じ構成を再現しやすくなります。

ロール設計シートの例(ロール名は架空)
# 作る人:経理領域のエージェントを構成するビルダー
- role: XX_FIN_AI_AGENT_BUILDER # 例:カスタム・ジョブ・ロール
enable_permission_groups: true # 必須。忘れると Security タブにロールが出ない
roles_and_privileges:
- ORA_FUN_MANAGE_FIN_AI_AGENT
- ORA_FUN_MANAGE_FIN_AI_AGENT_HCM
- ORA_CSO_CONNECTORS_AI_AGENT_MANAGEMENT_DUTY
roles_and_permission_groups:
- ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_FIN_ADMINISTRATOR_DUTY
optional:
- ORA_FND_TRAP_PRIV # 外部 REST ツールを作る場合
- ORA_DR_FAI_BATCH_JOB_MANAGER_DUTY # スケジュール・トリガーを使う場合
# 使う人:エージェントと会話する従業員
- role: XX_AI_AGENT_USER # 例:共通の従業員ロールに割り当てる
enable_permission_groups: true
function_security_policies:
- HRC_ACCESS_AI_AGENT_CHAT_PRIV
roles_and_permission_groups:
- ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_RUNTIME_DUTY
AI Agent Studio 関連のスケジュール済プロセス(26C)
Import Resource Application Security Data … ロール設定の前提(①)
Import User and Role Application Security Data … ①の完了後に実行(②)
Index AI Agent Studio Assistant Objects and Attributes … ビルダー・アシスタント用。毎日
Aggregate AI Agent Usage and Metrics … 監視・評価の数値を集計
Process Agent Documents … ドキュメント・ツールの文書を処理(自動起動)

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”
  • 作る人(ビルダー)・使う人(実行)・サービス・アカウント(スケジュール実行など)のロールは分けて設計します。最小権限のレビューがしやすくなります
  • 事前定義ロールを割り当てると、契約していないクラウド・サービスのサブスクリプションとして計上される場合があります(公式の注意事項)。割当前に確認します
  • ビルダーの権限は製品ファミリー単位です。他ファミリーのワークフローをインポートしても、そのファミリーの権限がないと表示されません
  • 対応する試験:AI Agent Studio 模擬テスト の「AI Agent Studio の構成要素の理解と設定」「ロールとアクセス権限の作成・割当」
  • 構成要素 6 つ(Workflow、Agents、Topics、Tools、Instructions、Testing)の定義と、「デプロイできるのはワークフロー」を覚えます
  • エージェントの種類(User-proxy、Supervisor、Specialist/utility)と、ワークフロー型と階層型の使い分けを押さえます
  • 前提設定の順序(プロファイル・オプション → インポート・ジョブ 2 つ → カスタム・ロール)と、権限グループの有効化がよく問われます
  • 実行に必要な HRC_ACCESS_AI_AGENT_CHAT_PRIV と ORA_DR_FAI_GENERATIVE_AI_AGENT_RUNTIME_DUTY、外部 REST ツールに必要な ORA_FND_TRAP_PRIV を区別します

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