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Fusion Data Intelligence(FDI)の概要

Oracle Fusion Data Intelligence(FDI)は、Oracle Fusion Cloud Applications 向けに事前構築された分析アプリケーションの集まりです。ERP・SCM・HCM・CX の各分野向けの分析(Fusion ERP Analytics など)があり、このサイトの読者に関係が深いのは ERP 分野(GL・AP・AR・調達など)です。

公式ドキュメントの説明を要約すると、次のサービスです。

  • Fusion のデータを抽出し、Oracle Autonomous AI Lakehouse に取り込みます
  • その上で Oracle Analytics Cloud が動き、AI を活用したセルフサービス分析(データ準備、可視化、拡張分析、自然言語処理)を提供します
  • Oracle がデプロイ、性能監視、アップグレード、事前定義コンテンツの保守を行うマネージドサービスです
FDI のデータの流れ
Oracle Fusion Cloud Applications(ERP・SCM・HCM・CX)
→ データ・パイプライン(Oracle が管理。機能領域ごとに有効化し、スケジュールで増分更新)
→ Oracle Autonomous AI Lakehouse(Fusion のデータ、外部データ、カスタム・スキーマ)
→ セマンティックモデル(事前定義+拡張)
→ Oracle Analytics Cloud:主要メトリクス・ワークブック・レポート

26R3 の「About Oracle Fusion Data Intelligence Components」をもとに整理します。

構成要素 役割・特徴
Oracle Fusion Data Intelligence Console 管理者が機能領域の有効化(Data Configuration)やパイプラインの設定を行う管理画面
OCI Identity and Access Management(IAM) 利用者の認証・アクセス管理の基盤
データ・パイプライン Fusion からデータを抽出して Lakehouse へロードする仕組み。Oracle が管理する
Oracle Autonomous AI Lakehouse 取り込んだ Fusion のデータと、追加した外部データ(カスタム・スキーマ・表を含む)の格納先
Oracle Analytics Cloud 分析・可視化の実行基盤
データモデル(事前定義) Fusion のデータを分析向けに整えたモデル。Oracle が管理し、カスタマイズ・拡張できる
セマンティックモデル(事前定義) 分析で使う論理モデル。Oracle が管理し、FDI の拡張機能で拡張できる
ベストプラクティス・コンテンツ 主要メトリクス、ワークブック、レポート。Oracle が管理し、カスタマイズ・拡張できる

「事前定義の部分は Oracle が保守し、利用者は拡張する」という分担が基本です。事前定義の部分を直接書き換えるのではなく、拡張の仕組みで足す、という考え方は OTBI や BIP のカスタマイズと同じです。

FDI の価値は、取引データを分析できる形にするモデリングと、よく使う分析を 最初から持っている ことです。ERP 分野では、財務(GL・AP・AR・資産など)と調達のコンテンツが提供されます。25R1 の ERP リファレンスには、次のような名称が出てきます。

  • サブレジャー分野:Accounts Payables、Accounts Receivables、Assets など
  • AR のサブジェクト領域の例:AR Transactions、AR Receipts and Applications、AR Aging、AP and AR Aging
  • 機能領域の例:General Ledger(会計カレンダーの不一致が起きた場合は、この機能領域をリセットする、という案内があります)

どの機能領域・KPI が使えるかはリリースと契約内容で変わります。事前定義の KPI は、計算式と集計の基準日(通貨換算のレートタイプなど)を確認してから使います。25R1 のリファレンスにも、分析用通貨の換算にはパイプラインの構成パラメータで定義したレートタイプが使われ、基準日はサブジェクト領域ごとに決まっている、と書かれています。

  1. 管理者が Console の Data Configuration で、使いたい機能領域(例:Enterprise Resource Planning の GL・AP・AR)を選んで有効化します
  2. 有効化した機能領域のデータが Lakehouse に取り込まれます
  3. 以降は、Pipeline Settings ページの Data Refresh Schedule で決めた頻度・時刻に、増分更新が実行されます

増分更新は、有効化した機能領域、カスタム・データ構成、データ拡張を対象に、ソースの最新の変更を Lakehouse に取り込みます。ETL の実行時点までのデータが見えるため、OTBI のようなリアルタイム性はありません。

26R1 のドキュメントでは、増分更新は次の順に処理されます。

段階 対象
Prioritized Refresh 指定した表(Prioritize Datasets for Incremental Refresh。26R1 ではプレビュー機能)
Primary stage 事前定義のモジュール、種類が Dimension・Entity Extension・Fact のデータ拡張
Secondary stage 予測(prediction)モジュール、種類が Dataset のデータ拡張、最終更新日のないデータ拡張、Dimension Alias

公式ドキュメントは、スケジュール済みの増分更新を「最も重要な更新」と位置づけ、次の点を示しています。

  1. 業務時間外に実行する:利用者が午前 8 時に使いたく、更新に約 4 時間かかるなら、午前 2 時に開始して余裕を持たせます(ドキュメントの例)
  2. ブラックアウト・ウィンドウ:他の更新が始まらない時間帯を設定できます。既定では、増分更新の開始時刻の 180 分前 から始まります
  3. 実行中の更新は止まらない:ブラックアウトの開始時点で実行中の更新は完了まで続き、増分更新はその後に始まります。ほかの更新は、増分更新より十分前に終わるようにします
  4. タイムゾーンは都市名で指定する:Asia/Tokyo のように都市名の形式を使い、JST のような略称は使いません。時刻はローカル時間から計算されます
スケジュール設計の例(架空の要件)
要件 :経理部門が毎朝 8:00 に、前日までの AP・AR・GL の KPI を見たい
更新の所要 :約 4 時間(初回のテスト実行で計測した値)
開始時刻 :2:00(Asia/Tokyo) ← 8:00 の 4 時間前に、さらに余裕を見る
ブラックアウト:23:00 から(既定の 180 分前)。他の更新は 23:00 までに終える

より頻繁な更新を使いたい場合は、Frequent Data Refresh や、機能領域ごとにスケジュールを上書きする機能(Override Data Pipeline Schedules for Functional Areas。プレビュー表示あり)がドキュメントにあります。利用条件と上限は、リリースにより異なるため公式ドキュメントで確認してください。

手段 できること 制約・注意
データ拡張(Data Augmentation) Fusion の項目やデータを分析に加える。Dimension、Entity Extension、Fact、Dataset などの種類がある 種類により更新の段階が変わる。手順は公式の「Augment Your Data」で確認
カスタム・データ構成 事前定義の機能領域とは別に定義するデータ構成。増分更新の対象に含まれる 作り方と対象の範囲は公式ドキュメントで確認
セマンティックモデル拡張 事前定義のセマンティックモデルの拡張とセキュリティの設定 FDI の Semantic Model Extensions のフレームワークだけを使う。OAC の Semantic Modeler や API では構成できない
外部データのロード Salesforce や E-Business Suite など Fusion 以外のデータを同じ Lakehouse に取り込み、事前定義のデータセットと結合する 任意の ETL ツールや Oracle Data Integrator でカスタム・スキーマ・表にロードできる。30 を超えるセルフサービスのコネクタで、ロードせずに接続する方法もある。Excel の取込みも可能
External Application Merge 外部のセマンティックモデル(OAC、Oracle Analytics Server、OBIEE)を FDI に統合する 非本番のインスタンスのみ
主要メトリクス・ワークブック・レポート 事前定義のコンテンツをカスタマイズ、または新規に作る 事前定義のセマンティックモデルは、OAC のクライアント・ツールで開く・更新する・マージすることはできない

Fusion に追加した DFF などの項目を分析したい場合も、まず「データ拡張で足せるか」を検討します。OTBI の BI 有効化(OTBI)とは仕組みが別なので、OTBI で見える項目が FDI に自動で現れるわけではありません。

FDI のデータセキュリティは、FDI 側で設定 します。OTBI のように、実行時に Fusion のデータセキュリティを自動で継承する仕組みではありません。

25R1 の ERP リファレンスでは、データ・アクセスの設定方法として次の 3 つが示されています。

  1. セキュリティ・コンテキストを手動で割り当てる
  2. データ・セキュリティの割当てをアップロード/ダウンロードして一括で管理する
  3. Cloud ERP から割当てを伝播(プロパゲート)する。伝播される値は、元帳、BU、プロジェクト組織、調達 BU(PO Agent)

財務の KPI は機密性が高いため、Fusion のロール設計とは別に、FDI の利用者と見せる範囲を設計書に書く ようにします。Fusion のロール設計は セキュリティ設計 を参照してください。

観点 OTBI BICC FDI
主な目的 日々の業務の照会・集計 Fusion のデータを外部へ大量・増分で抽出 事前定義の KPI・トレンド・横断分析
データの場所 Fusion の取引データを実行時に照会 抽出したファイルを外部ストレージへ出力。自社の DWH などで使う Oracle 管理の Lakehouse に取り込み
鮮度 リアルタイム 抽出スケジュールに依存 パイプラインの更新スケジュールに依存
外部データとの結合 できない(Fusion のデータが対象) 自社の DWH 側で行う Lakehouse にロードして結合できる
セキュリティ Fusion のロール・データセキュリティを継承 抽出単位で管理し、出力先で保護 FDI 側で設定(ERP は Fusion から伝播も可)
提供形態 Fusion の機能 Fusion の機能 別サブスクリプション

使い分けの要点は次のとおりです。

  • OTBI と FDI は補完関係:2022 年の Oracle のブログは、OTBI を日々の業務のリアルタイム照会、FAW(現在の FDI)を過去のトレンド分析や Fusion 以外のデータを含む分析、と整理しています。置き換えではなく併用です
  • BICC と FDI は目的が違う:BICC はデータを取り出す手段で、分析基盤は自分で用意します。FDI は分析基盤とコンテンツを含みます
  • 外部への共有はライセンスの対象:26R2 のドキュメントには、FDI のデータを外部システムと共有・連携する場合、対象モジュールの従業員メトリックによるライセンスが必要、という記載があります。FDI の Lakehouse を BICC の代わりのデータ提供元にする設計は、先に契約を確認します。契約の詳細は Oracle の担当者に確認してください

BICC の使い方は BICC によるデータ抽出、ツール全体の選び方は レポーティングツールの全体像と使い分け を参照してください。

「FDI を入れるか」は、要件を次の観点で整理して判断します。

観点 FDI を検討する 他の手段で足りる
目的 数年分のトレンド、モジュール横断の KPI 当日の取引の照会 → OTBI
利用者 経営層・部門長・分析担当 現場の担当者 → OTBI、BIP
データ Fusion と外部データ(販売・EBS など)を結合したい Fusion のデータだけで足りる → OTBI
鮮度 日次などのスケジュール更新で足りる リアルタイムが必須 → OTBI
体制 分析用 DWH を自分で設計・運用したくない 全社の DWH が既にある → BICC で連携
帳票 ダッシュボードで足りる 体裁の決まった帳票 → BIP、財務諸表 → Financial Reporting

検討の進め方は次のとおりです。

  1. KPI を棚卸しする:経営や部門が見たい指標を、定義(計算式・基準日・通貨)つきで一覧にします
  2. 事前定義でどこまで満たせるか確認する:事前定義の KPI・ワークブックと突き合わせ、足りない指標を「拡張が必要」として分けます
  3. データ量と更新時間を見積る:業務開始までに更新が終わるかを、スケジュール設計の例のように逆算します
  4. セキュリティの対応表を作る:Fusion のロール・データアクセス(元帳・BU など)と、FDI の見せる範囲の対応を決めます
  5. 費用を比較する:サブスクリプション費用と、BICC+自社 DWH+BI ツールで作る場合の構築・運用の費用を比べます

作るものの方針(標準・拡張・別基盤)の決め方は 標準機能とアドオンの考え方 と共通です。

画面の名称は 25R1〜26R1 のドキュメントによります。実機の表示とあわせて確認してください。

  1. サブスクリプションにもとづいて FDI のインスタンスが用意されたら、管理者が Console にサインインします
  2. ナビゲータ > Console > Data Configuration(Application Administration)> 対象のアプリケーション(例:Enterprise Resource Planning)を開き、使う機能領域を有効化します
  3. Pipeline Settings の Data Refresh Schedule で、頻度・時刻・タイムゾーン(都市名)を設定します
  4. データ・セキュリティ(元帳、BU など)を割り当てます
  5. 初回の取込みが終わったら、事前定義の KPI を Fusion の標準レポート(OTBI の分析や GL の試算表)と突き合わせ、差異の理由(更新時点、通貨、カレンダー)を記録します
  6. 追加項目や外部データが必要なら、データ拡張や外部データのロードで足し、更新の対象と段階を確認します
  7. ワークブックやレポートをカスタマイズし、利用者に展開します

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”

ベストプラクティスは次のとおりです。

  1. 用途で分担する:日々の確認は OTBI、帳票は BIP、財務諸表は Financial Reporting、トレンドと横断分析は FDI、と役割を決めます
  2. KPI 定義書を作る:指標ごとに、計算式、データの出所(FDI の項目と Fusion の画面)、更新頻度、責任者を書きます
  3. 標準で足りるかを先に確認する:データ拡張の前に、事前定義のコンテンツで要件を満たせないかを確認します
  4. 四半期ごとのアップデートを監視する:FDI は Oracle が事前定義コンテンツを更新します。更新後に主要な KPI を回帰テストします
  5. 環境を分ける:非本番で拡張とマージを検証してから、本番に反映します(External Application Merge は非本番のみです)
  • GL 認定試験(1Z0-1054-26)の中心的な出題対象は、Financial Reporting Center や勘定グループ、AI/自動化、Redwood です。FDI が出題範囲に含まれるかは、Oracle University の試験ページの出題範囲で確認してください(GL の全体像と試験範囲)
  • 試験のシナリオ問題の判断軸として、次の対応を押さえます。GL 模擬テスト と 認定試験ガイド も参照してください
    • リアルタイムの取引照会 → OTBI
    • 体裁の決まった帳票・大量出力 → BIP
    • 財務諸表・残高分析 → Financial Reporting、Smart View
    • 数年分のトレンド・事前定義 KPI・外部データとの結合 → FDI
    • 他システムや DWH へのデータ提供 → BICC
  • 用語:Fusion Data Intelligence(旧 Fusion Analytics Warehouse)、データ・パイプライン、Autonomous AI Lakehouse、セマンティックモデル、データ拡張(Data Augmentation)

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