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Oracle Integration(OIC Gen3)の概要とコンポーネント

OIC は、アプリケーション同士のデータ連携と業務自動化を、ブラウザ上のローコード開発で実装するサービスです。OCI(Oracle Cloud Infrastructure)のテナンシ内に インスタンス を作成して使います。サーバーやミドルウェアのパッチ適用は Oracle が行います。

OIC でできることは大きく次のとおりです。

  1. 統合(Integrations):アダプタで各システムに接続し、データを変換(マッピング)して受け渡す
  2. ファイル連携:組込みの SFTP サーバーである File Server と、ファイル処理アクション(Stage File)
  3. 業務自動化:Process Automation、Decisions、Human in the loop、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)。いずれも Enterprise エディション以上
  4. B2B:EDI などの取引先連携(Enterprise 以上)
  5. AI:OCI AI サービスや LLM の呼出し、AI エージェント、MCP サーバー(後述)

Fusion ERP のプロジェクトでは、OIC は「標準機能で足りない連携(RICEW の I)」を実装する場所です。Fusion 側の REST/SOAP/FBDI/ビジネスイベントを、OIC の Oracle ERP Cloud アダプタ から使います。連携方式の選び方は 連携方式の全体像と選び方 を参照してください。

コンポーネント 役割 実装上のポイント
プロジェクト(Project) 関連する統合と資産をまとめる単位。設計・管理・監視をここで行う 新規開発はプロジェクトで行うことが推奨。アクセス制御とデプロイメントの単位
統合(Integration) トリガー → アクション → 呼出しの処理フロー 名前 50 文字、バージョンは 01.00.0000 形式
接続(Connection) 接続先のURL・認証情報。アダプタから作成 統合からはトリガーまたは呼出し(invoke)として使う
アダプタ(Adapter) 接続先ごとの部品(ERP Cloud、REST、SOAP、FTP、DB など) 専用アダプタがなければ REST/SOAP/FTP で接続。Rapid Adapter Builder で自作も可能
マッピング(Mapping) 送信元から送信先へのデータ変換 実体は XSLT。マッパーで作成
ルックアップ(Lookup) コード値の変換表(例:システムAの「01」→ Fusionの「STANDARD」) 最大 100 列。プロジェクト内でのみ参照可能
JavaScript ライブラリ マッパーでは難しい計算・文字列処理の関数 実行は 15 秒まで、引数は 20 個まで
イベント(Event) OIC 内の発行・購読(pub/sub)用の定義 イベント統合で購読。インスタンス当たりイベント統合は 50 まで
接続エージェント オンプレミス・閉域網のシステムに接続するためのエージェント オンプレミス側から外向き通信のみ。受信ポートは開けない
File Server OIC に組み込まれた SFTP サーバー 外部システムとのファイル受け渡し場所として使う
パッケージ(Package) Gen2 の整理単位 Gen2 からのアップグレードで残る。新規はプロジェクトを推奨

統合を作成するときに選ぶ パターン で、何をきっかけに起動するかが決まります。

パターン 起動のきっかけ 典型例
アプリケーション(Application) アプリケーションからの要求(トリガー接続が受信) 外部システムからの REST 呼出し、ERP のビジネスイベント
スケジュール(Schedule) 指定日時・周期、または手動実行 毎晩 22:00 に SFTP のファイルを取り込む
イベント(Event) 別の統合が発行した OIC イベント 1つのイベントを複数の統合で購読する

アプリケーション統合は 同期 と 非同期 に分かれます。

  • 非同期:受付後の実行が保証され、即時に受領応答を返します。エラーになったインスタンスは再送信(resubmit)で回復できます。公式は「可能な限り非同期を使う」ことを推奨しています
  • 同期:呼出し元へすぐに応答を返します(例:受注確認番号)。エラーは呼出し元に返り、回復不能(再送信できない)です

よく使う組合せは「同期で受付番号だけ返し、重い処理は非同期の統合に任せる」「スケジュール統合が起点になり、本体処理は非同期の統合で行う」の2つです。

プロジェクトは、OIC 3 で推奨される開発・リリース管理の単位です。

  • 含められるもの:統合、接続、ルックアップ、JavaScript ライブラリ、イベント、AI エージェント、B2B、Decisions、Human in the loop、ロボット など
  • アクセス制御:プロジェクト単位で、どのユーザー・グループが編集・閲覧・監視できるかを設定できます。この細かい制御はプロジェクトでしか実現できません
  • デプロイメント:統合(とロボット)のバージョンの組合せのスナップショットです。開発 → テスト → 本番の移送とロールバックに使います
  • 共有範囲:ルックアップと JavaScript ライブラリは、そのプロジェクトの中でのみ参照できます。証明書はインスタンス全体で共通です
  • 主な制限(1 プロジェクト当たり):統合 200、接続 100、ルックアップ 100、JavaScript ライブラリ 50、デプロイメント 100、イベント 50。プロジェクト数には上限がありません

Fusion ERP と OIC を組み合わせるときの典型パターンは次の4つです。各パターンの詳細は 接続とアダプタ で説明します。

  1. リアルタイム更新(呼出し):外部システム → OIC(REST トリガー)→ ERP Cloud アダプタで Fusion の REST リソースや SOAP サービスを呼び出す
  2. イベント駆動(アウトバウンド):Fusion のビジネスイベント(例:買掛金請求書の承認)を ERP Cloud アダプタのトリガーで購読し、外部システムへ通知する(演習2)
  3. 一括取込(FBDI):ファイルを CSV → zip に変換し、ERP Cloud アダプタの Import Bulk Data into Oracle ERP Cloud で取り込む。完了は コールバック で受け取る(演習1)
  4. 一括抽出:BI Publisher レポートや ExportBulkData で Fusion からデータを取り出し、外部へ配信する。ERP Cloud アダプタでは SQL を直接書けないため、抽出ロジックは BIP レポートとして Fusion 側に作ります

エディションと課金(メッセージ)

Section titled “エディションと課金(メッセージ)”

OIC 3 には Standard/Enterprise/Healthcare の3エディションがあります。上位は下位の機能をすべて含みます(2026 年 9 月時点の公式ドキュメント)。

機能 Standard Enterprise Healthcare
統合・標準アダプタ・File Server ○ ○ ○
OCI AI サービス・LLM アダプタ ○ ○ ○
Enterprise アダプタ(EBS、JD Edwards、Siebel、SAP) × ○ ○
AI アシスタント・エージェント型 AI・MCP サーバー・ナレッジベース × ○ ○
Process Automation・Decisions・Human in the loop・RPA・B2B × ○ ○
HL7・ヘルスケア・アダプタ × × ○
  • Standard のインスタンスでも Enterprise の機能は画面に見えますが、エディションを Enterprise に変更しない限り使用権はありません
  • 実行データの保持期間は既定で 32 日(Healthcare は 184 日)。Enterprise は追加の消費(93 日で +10%、184 日で +20%)で延長できます

課金は メッセージパック 単位です。1 パックは 1 時間あたり 5,000 メッセージ(既存の Fusion Middleware ライセンスを持ち込む BYOL では 20,000 メッセージ)です。メッセージの数え方の要点は次のとおりです。

  • トリガー:受信ペイロード 50KB ごとに 1 メッセージ(最低 1)。120KB の REST 受信なら 3 メッセージ
  • 呼出し(invoke):要求は数えない。応答が 50KB を超えたときだけ 50KB 単位で数える
  • ファイル:50KB を超えるファイルのみ 50KB 単位で数える
  • スケジュール統合:起動自体は数えない。50KB 超のファイルと応答のみ数える
  • 同一インスタンス内の統合間呼出し:呼ばれる側(子統合)のトリガーは数えない
  • 超過時:課金されるパック数は「設定したパック数」と「実際に消費したパック数」の大きい方。超過しても同期要求の同時実行数の上限は増えない

同期要求の同時実行数はパック数に比例します(1 パックあたり 100、BYOL は 400。最大 2,000)。ピーク時の同時実行数からパック数を見積もる点に注意してください。

  • インスタンスは OCI コンソールで、テナンシの コンパートメント に作成します。CLI、Terraform、API でも作成できます
  • 実案件では 開発・テスト・本番 を別インスタンスにするのが一般的です。プロジェクト・デプロイメント(またはエクスポート/インポート)で上位環境へ移送します。詳細は 障害処理・テスト・監視・移送 を参照してください
  • 接続先 URL や認証情報は環境ごとに異なるため、移送後に接続を設定し直してから統合を有効化(activate)します

OIC のロールは定義済みで、独自ロールは作れません。IAM ドメインのグループに割り当てます。

ロール できること
ServiceAdministrator 全機能の管理(設定、スケジュールの実行ユーザー変更など)
ServiceDeveloper 統合などの開発
ServiceMonitor インスタンスやメトリックの監視のみ(変更不可)
ServiceViewer 統合・接続・ルックアップなどの参照のみ
ServiceUser 基本機能の利用と参照、統合の実行
ServiceInvoker REST/SOAP で公開された統合やスケジュール統合の呼出しのみ(画面操作は不可)

外部システムから統合を呼び出すための技術ユーザーには、ServiceInvoker のような最小権限のロールを付けます。

項目 制限値(2026 年 9 月時点)
有効化できる統合数 インスタンス当たり 800
同期統合の処理時間 300 秒(5 分)でタイムアウト
非同期統合・スケジュール統合の処理時間 6 時間で打ち切り
統合の呼出しの深さ 16 段まで
While ループ 5,000 回まで(For-Each は上限なし)
Parallel アクションの分岐 5 分岐まで
JavaScript 関数 実行 15 秒、引数 20 個まで
XSLT(マッピング)の実行 120 秒まで
スケジュール・パラメータ 統合当たり 5 個、値は 256 文字まで
グローバル変数 統合当たり 20 個まで
再送信(resubmit) 1 インスタンス ID 当たり 10 回まで

制限値は四半期ごとに変わることがあります。設計時は公式の「Service Limits」を必ず確認してください。

旧世代(Oracle Integration Generation 2)の資料を読むときは、次の違いに注意してください。

  • 整理単位:Gen2 はパッケージ中心。OIC 3 はプロジェクトを推奨
  • パターン名:Gen2 の「App Driven Orchestration」は OIC 3 では「Application」。Gen2 の「Publish to OIC/Subscribe to OIC」は、OIC 3 では「アプリケーション統合(Publish Event アクション)+イベント統合」で実現します
  • 接続エージェント:OIC 3 では Basic 認証での登録はできず、OAuth 2.0 のトークン認証のみです
  • 監視:OIC 3 の監視は Observability(オブザーバビリティ)画面で行います

AI 機能(AI アシスタント・AI アクション・エージェント)

Section titled “AI 機能(AI アシスタント・AI アクション・エージェント)”

OIC 3 は 2025〜2026 年に AI 機能が大きく拡充されました(以下は 2026 年 9 月時点の公式ドキュメントに基づきます)。試験(1Z0-1042-26)でも AI 機能が出題分野に含まれる想定です(2026 年版の公式 Exam Topics は取得できず未確認のため、受験前に公式ページで確認してください)。

種類 内容 主な要件
AI アシスタント 自然言語でのプロジェクト・統合の作成と編集、iCal スケジュールの生成、説明文・ドキュメント・テストケースの生成、マッピング推奨、エラーの要約と対処案 Enterprise/Healthcare。Settings > AI Settings の Enable AI Assistant で有効・無効を切り替え(既定は有効)
OCI AI サービスのアクション Document Understanding、Vision、Language、Speech、Generative AI、Generative AI Agents RAG の6つ OCI 商用レルム(OC1)のみ。各 OCI サービスのリージョン対応に依存
LLM アダプタ OpenAI、Anthropic、OpenSearch。Fusion の AI Agent Studio のエージェントを呼ぶアダプタもある 全リージョン
AI エージェント(Agentic AI) 統合を エージェント型 AI ツール として登録し、LLM が使うツールと順序を判断する Enterprise/Healthcare
MCP サーバー プロジェクトの Enable MCP server を有効にすると、プロジェクトが MCP サーバーになり、ツール登録した統合を外部の MCP クライアントから使える 機密クライアント・アプリケーション(OAuth)が前提
ナレッジベース 社内文書を RAG 用に取り込み、統合やエージェントから検索する OCI Search with OpenSearch、Object Storage からの取込み

AI エージェントの考え方は次のとおりです。

  • 統合は決定的(毎回同じ手順で動く)、エージェントは適応的(LLM が状況に応じて次の手順を選ぶ)。手順が決まっている処理は統合で作ります
  • ツールにする統合は、REST トリガー・POST・JSON の入出力 で作り、有効化してから Create agentic AI tool で登録します
  • 思考パターン(agentic AI pattern)は ReAct(考える → 1 つ実行 → 結果を見て次を決める)と Plan & Execute(計画担当が手順を作り、実行担当が順に実行)があります。新しいユースケースは ReAct で試作し、手順が固まったら Plan & Execute に移すのが公式の推奨です
  • プロンプト・テンプレート は変数入りのシステム・プロンプトで、{{ payload.city }} のようにペイロードの値を差し込みます
  • 会話 ID(conversation ID) を使うと、前回の実行内容を踏まえてエージェントを再実行できます
  • 統合からは AI Actions カテゴリのアクション(エージェントの開始、アクティビティ・ストリームの取得、エージェントへの応答送信など)でエージェントを呼び出します

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”
  • 統合はできるだけ小さく単純に保ちます。統合同士はリソースを奪い合うためです
  • 技術ユーザーやロールは最小権限にします(呼出し専用なら ServiceInvoker)
  • 実行データの保持期間(既定 32 日)より長く残したい監査証跡は、統合の中で外部に記録します
  • 対応する試験:OIC 模擬テスト(1Z0-1042-26) の「OIC 統合の基礎(Getting Started with OIC Integrations)」と「AI 機能の活用(Leveraging AI Features & Capabilities)」(分野名は当サイト独自の区分で暫定です。公式の出題範囲は受験前に確認してください)
  • 統合パターン3種(アプリケーション/スケジュール/イベント)と、同期・非同期の違い(同期のエラーは再送信できない)
  • 接続・統合・アダプタ・トリガー/呼出し・マッピング・ルックアップの関係
  • ビジネス識別子は最大 3 つ、うち 1 つがプライマリ
  • メッセージ課金:50KB 単位、トリガー側で数える、呼出しの要求は数えない
  • エディションによる機能差(AI アシスタント・エージェントは Enterprise 以上)
  • AI:OCI AI サービスの6アクション、ReAct と Plan & Execute の使い分け、統合をツールにする条件、MCP サーバーの有効化
  • Web サービスの基礎(WSDL・SOAP・REST・JSON)も出題範囲です。REST API の基本 と SOAP Web サービス で復習してください

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