Oracle Integration(OIC Gen3)の概要とコンポーネント
OIC は、アプリケーション同士のデータ連携と業務自動化を、ブラウザ上のローコード開発で実装するサービスです。OCI(Oracle Cloud Infrastructure)のテナンシ内に インスタンス を作成して使います。サーバーやミドルウェアのパッチ適用は Oracle が行います。
OIC でできることは大きく次のとおりです。
- 統合(Integrations):アダプタで各システムに接続し、データを変換(マッピング)して受け渡す
- ファイル連携:組込みの SFTP サーバーである File Server と、ファイル処理アクション(Stage File)
- 業務自動化:Process Automation、Decisions、Human in the loop、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)。いずれも Enterprise エディション以上
- B2B:EDI などの取引先連携(Enterprise 以上)
- AI:OCI AI サービスや LLM の呼出し、AI エージェント、MCP サーバー(後述)
Fusion ERP のプロジェクトでは、OIC は「標準機能で足りない連携(RICEW の I)」を実装する場所です。Fusion 側の REST/SOAP/FBDI/ビジネスイベントを、OIC の Oracle ERP Cloud アダプタ から使います。連携方式の選び方は 連携方式の全体像と選び方 を参照してください。
主要コンポーネント
Section titled “主要コンポーネント”| コンポーネント | 役割 | 実装上のポイント |
|---|---|---|
| プロジェクト(Project) | 関連する統合と資産をまとめる単位。設計・管理・監視をここで行う | 新規開発はプロジェクトで行うことが推奨。アクセス制御とデプロイメントの単位 |
| 統合(Integration) | トリガー → アクション → 呼出しの処理フロー | 名前 50 文字、バージョンは 01.00.0000 形式 |
| 接続(Connection) | 接続先のURL・認証情報。アダプタから作成 | 統合からはトリガーまたは呼出し(invoke)として使う |
| アダプタ(Adapter) | 接続先ごとの部品(ERP Cloud、REST、SOAP、FTP、DB など) | 専用アダプタがなければ REST/SOAP/FTP で接続。Rapid Adapter Builder で自作も可能 |
| マッピング(Mapping) | 送信元から送信先へのデータ変換 | 実体は XSLT。マッパーで作成 |
| ルックアップ(Lookup) | コード値の変換表(例:システムAの「01」→ Fusionの「STANDARD」) | 最大 100 列。プロジェクト内でのみ参照可能 |
| JavaScript ライブラリ | マッパーでは難しい計算・文字列処理の関数 | 実行は 15 秒まで、引数は 20 個まで |
| イベント(Event) | OIC 内の発行・購読(pub/sub)用の定義 | イベント統合で購読。インスタンス当たりイベント統合は 50 まで |
| 接続エージェント | オンプレミス・閉域網のシステムに接続するためのエージェント | オンプレミス側から外向き通信のみ。受信ポートは開けない |
| File Server | OIC に組み込まれた SFTP サーバー | 外部システムとのファイル受け渡し場所として使う |
| パッケージ(Package) | Gen2 の整理単位 | Gen2 からのアップグレードで残る。新規はプロジェクトを推奨 |
統合の3つのパターン
Section titled “統合の3つのパターン”統合を作成するときに選ぶ パターン で、何をきっかけに起動するかが決まります。
| パターン | 起動のきっかけ | 典型例 |
|---|---|---|
| アプリケーション(Application) | アプリケーションからの要求(トリガー接続が受信) | 外部システムからの REST 呼出し、ERP のビジネスイベント |
| スケジュール(Schedule) | 指定日時・周期、または手動実行 | 毎晩 22:00 に SFTP のファイルを取り込む |
| イベント(Event) | 別の統合が発行した OIC イベント | 1つのイベントを複数の統合で購読する |
アプリケーション統合は 同期 と 非同期 に分かれます。
- 非同期:受付後の実行が保証され、即時に受領応答を返します。エラーになったインスタンスは再送信(resubmit)で回復できます。公式は「可能な限り非同期を使う」ことを推奨しています
- 同期:呼出し元へすぐに応答を返します(例:受注確認番号)。エラーは呼出し元に返り、回復不能(再送信できない)です
よく使う組合せは「同期で受付番号だけ返し、重い処理は非同期の統合に任せる」「スケジュール統合が起点になり、本体処理は非同期の統合で行う」の2つです。
プロジェクト
Section titled “プロジェクト”プロジェクトは、OIC 3 で推奨される開発・リリース管理の単位です。
- 含められるもの:統合、接続、ルックアップ、JavaScript ライブラリ、イベント、AI エージェント、B2B、Decisions、Human in the loop、ロボット など
- アクセス制御:プロジェクト単位で、どのユーザー・グループが編集・閲覧・監視できるかを設定できます。この細かい制御はプロジェクトでしか実現できません
- デプロイメント:統合(とロボット)のバージョンの組合せのスナップショットです。開発 → テスト → 本番の移送とロールバックに使います
- 共有範囲:ルックアップと JavaScript ライブラリは、そのプロジェクトの中でのみ参照できます。証明書はインスタンス全体で共通です
- 主な制限(1 プロジェクト当たり):統合 200、接続 100、ルックアップ 100、JavaScript ライブラリ 50、デプロイメント 100、イベント 50。プロジェクト数には上限がありません
Fusion との組合せ方
Section titled “Fusion との組合せ方”Fusion ERP と OIC を組み合わせるときの典型パターンは次の4つです。各パターンの詳細は 接続とアダプタ で説明します。
- リアルタイム更新(呼出し):外部システム → OIC(REST トリガー)→ ERP Cloud アダプタで Fusion の REST リソースや SOAP サービスを呼び出す
- イベント駆動(アウトバウンド):Fusion のビジネスイベント(例:買掛金請求書の承認)を ERP Cloud アダプタのトリガーで購読し、外部システムへ通知する(演習2)
- 一括取込(FBDI):ファイルを CSV → zip に変換し、ERP Cloud アダプタの Import Bulk Data into Oracle ERP Cloud で取り込む。完了は コールバック で受け取る(演習1)
- 一括抽出:BI Publisher レポートや ExportBulkData で Fusion からデータを取り出し、外部へ配信する。ERP Cloud アダプタでは SQL を直接書けないため、抽出ロジックは BIP レポートとして Fusion 側に作ります
エディションと課金(メッセージ)
Section titled “エディションと課金(メッセージ)”エディション
Section titled “エディション”OIC 3 には Standard/Enterprise/Healthcare の3エディションがあります。上位は下位の機能をすべて含みます(2026 年 9 月時点の公式ドキュメント)。
| 機能 | Standard | Enterprise | Healthcare |
|---|---|---|---|
| 統合・標準アダプタ・File Server | ○ | ○ | ○ |
| OCI AI サービス・LLM アダプタ | ○ | ○ | ○ |
| Enterprise アダプタ(EBS、JD Edwards、Siebel、SAP) | × | ○ | ○ |
| AI アシスタント・エージェント型 AI・MCP サーバー・ナレッジベース | × | ○ | ○ |
| Process Automation・Decisions・Human in the loop・RPA・B2B | × | ○ | ○ |
| HL7・ヘルスケア・アダプタ | × | × | ○ |
- Standard のインスタンスでも Enterprise の機能は画面に見えますが、エディションを Enterprise に変更しない限り使用権はありません
- 実行データの保持期間は既定で 32 日(Healthcare は 184 日)。Enterprise は追加の消費(93 日で +10%、184 日で +20%)で延長できます
メッセージの数え方
Section titled “メッセージの数え方”課金は メッセージパック 単位です。1 パックは 1 時間あたり 5,000 メッセージ(既存の Fusion Middleware ライセンスを持ち込む BYOL では 20,000 メッセージ)です。メッセージの数え方の要点は次のとおりです。
- トリガー:受信ペイロード 50KB ごとに 1 メッセージ(最低 1)。120KB の REST 受信なら 3 メッセージ
- 呼出し(invoke):要求は数えない。応答が 50KB を超えたときだけ 50KB 単位で数える
- ファイル:50KB を超えるファイルのみ 50KB 単位で数える
- スケジュール統合:起動自体は数えない。50KB 超のファイルと応答のみ数える
- 同一インスタンス内の統合間呼出し:呼ばれる側(子統合)のトリガーは数えない
- 超過時:課金されるパック数は「設定したパック数」と「実際に消費したパック数」の大きい方。超過しても同期要求の同時実行数の上限は増えない
同期要求の同時実行数はパック数に比例します(1 パックあたり 100、BYOL は 400。最大 2,000)。ピーク時の同時実行数からパック数を見積もる点に注意してください。
インスタンスと環境の考え方
Section titled “インスタンスと環境の考え方”インスタンスの作成と環境
Section titled “インスタンスの作成と環境”- インスタンスは OCI コンソールで、テナンシの コンパートメント に作成します。CLI、Terraform、API でも作成できます
- 実案件では 開発・テスト・本番 を別インスタンスにするのが一般的です。プロジェクト・デプロイメント(またはエクスポート/インポート)で上位環境へ移送します。詳細は 障害処理・テスト・監視・移送 を参照してください
- 接続先 URL や認証情報は環境ごとに異なるため、移送後に接続を設定し直してから統合を有効化(activate)します
ユーザーとロール
Section titled “ユーザーとロール”OIC のロールは定義済みで、独自ロールは作れません。IAM ドメインのグループに割り当てます。
| ロール | できること |
|---|---|
| ServiceAdministrator | 全機能の管理(設定、スケジュールの実行ユーザー変更など) |
| ServiceDeveloper | 統合などの開発 |
| ServiceMonitor | インスタンスやメトリックの監視のみ(変更不可) |
| ServiceViewer | 統合・接続・ルックアップなどの参照のみ |
| ServiceUser | 基本機能の利用と参照、統合の実行 |
| ServiceInvoker | REST/SOAP で公開された統合やスケジュール統合の呼出しのみ(画面操作は不可) |
外部システムから統合を呼び出すための技術ユーザーには、ServiceInvoker のような最小権限のロールを付けます。
主なサービス制限
Section titled “主なサービス制限”| 項目 | 制限値(2026 年 9 月時点) |
|---|---|
| 有効化できる統合数 | インスタンス当たり 800 |
| 同期統合の処理時間 | 300 秒(5 分)でタイムアウト |
| 非同期統合・スケジュール統合の処理時間 | 6 時間で打ち切り |
| 統合の呼出しの深さ | 16 段まで |
| While ループ | 5,000 回まで(For-Each は上限なし) |
| Parallel アクションの分岐 | 5 分岐まで |
| JavaScript 関数 | 実行 15 秒、引数 20 個まで |
| XSLT(マッピング)の実行 | 120 秒まで |
| スケジュール・パラメータ | 統合当たり 5 個、値は 256 文字まで |
| グローバル変数 | 統合当たり 20 個まで |
| 再送信(resubmit) | 1 インスタンス ID 当たり 10 回まで |
制限値は四半期ごとに変わることがあります。設計時は公式の「Service Limits」を必ず確認してください。
Gen2 との主な違い
Section titled “Gen2 との主な違い”旧世代(Oracle Integration Generation 2)の資料を読むときは、次の違いに注意してください。
- 整理単位:Gen2 はパッケージ中心。OIC 3 はプロジェクトを推奨
- パターン名:Gen2 の「App Driven Orchestration」は OIC 3 では「Application」。Gen2 の「Publish to OIC/Subscribe to OIC」は、OIC 3 では「アプリケーション統合(Publish Event アクション)+イベント統合」で実現します
- 接続エージェント:OIC 3 では Basic 認証での登録はできず、OAuth 2.0 のトークン認証のみです
- 監視:OIC 3 の監視は Observability(オブザーバビリティ)画面で行います
AI 機能(AI アシスタント・AI アクション・エージェント)
Section titled “AI 機能(AI アシスタント・AI アクション・エージェント)”OIC 3 は 2025〜2026 年に AI 機能が大きく拡充されました(以下は 2026 年 9 月時点の公式ドキュメントに基づきます)。試験(1Z0-1042-26)でも AI 機能が出題分野に含まれる想定です(2026 年版の公式 Exam Topics は取得できず未確認のため、受験前に公式ページで確認してください)。
| 種類 | 内容 | 主な要件 |
|---|---|---|
| AI アシスタント | 自然言語でのプロジェクト・統合の作成と編集、iCal スケジュールの生成、説明文・ドキュメント・テストケースの生成、マッピング推奨、エラーの要約と対処案 | Enterprise/Healthcare。Settings > AI Settings の Enable AI Assistant で有効・無効を切り替え(既定は有効) |
| OCI AI サービスのアクション | Document Understanding、Vision、Language、Speech、Generative AI、Generative AI Agents RAG の6つ | OCI 商用レルム(OC1)のみ。各 OCI サービスのリージョン対応に依存 |
| LLM アダプタ | OpenAI、Anthropic、OpenSearch。Fusion の AI Agent Studio のエージェントを呼ぶアダプタもある | 全リージョン |
| AI エージェント(Agentic AI) | 統合を エージェント型 AI ツール として登録し、LLM が使うツールと順序を判断する | Enterprise/Healthcare |
| MCP サーバー | プロジェクトの Enable MCP server を有効にすると、プロジェクトが MCP サーバーになり、ツール登録した統合を外部の MCP クライアントから使える | 機密クライアント・アプリケーション(OAuth)が前提 |
| ナレッジベース | 社内文書を RAG 用に取り込み、統合やエージェントから検索する | OCI Search with OpenSearch、Object Storage からの取込み |
AI エージェントの考え方は次のとおりです。
- 統合は決定的(毎回同じ手順で動く)、エージェントは適応的(LLM が状況に応じて次の手順を選ぶ)。手順が決まっている処理は統合で作ります
- ツールにする統合は、REST トリガー・POST・JSON の入出力 で作り、有効化してから Create agentic AI tool で登録します
- 思考パターン(agentic AI pattern)は ReAct(考える → 1 つ実行 → 結果を見て次を決める)と Plan & Execute(計画担当が手順を作り、実行担当が順に実行)があります。新しいユースケースは ReAct で試作し、手順が固まったら Plan & Execute に移すのが公式の推奨です
- プロンプト・テンプレート は変数入りのシステム・プロンプトで、
{{ payload.city }}のようにペイロードの値を差し込みます - 会話 ID(conversation ID) を使うと、前回の実行内容を踏まえてエージェントを再実行できます
- 統合からは AI Actions カテゴリのアクション(エージェントの開始、アクティビティ・ストリームの取得、エージェントへの応答送信など)でエージェントを呼び出します
落とし穴とベストプラクティス
Section titled “落とし穴とベストプラクティス”- 統合はできるだけ小さく単純に保ちます。統合同士はリソースを奪い合うためです
- 技術ユーザーやロールは最小権限にします(呼出し専用なら ServiceInvoker)
- 実行データの保持期間(既定 32 日)より長く残したい監査証跡は、統合の中で外部に記録します
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- 対応する試験:OIC 模擬テスト(1Z0-1042-26) の「OIC 統合の基礎(Getting Started with OIC Integrations)」と「AI 機能の活用(Leveraging AI Features & Capabilities)」(分野名は当サイト独自の区分で暫定です。公式の出題範囲は受験前に確認してください)
- 統合パターン3種(アプリケーション/スケジュール/イベント)と、同期・非同期の違い(同期のエラーは再送信できない)
- 接続・統合・アダプタ・トリガー/呼出し・マッピング・ルックアップの関係
- ビジネス識別子は最大 3 つ、うち 1 つがプライマリ
- メッセージ課金:50KB 単位、トリガー側で数える、呼出しの要求は数えない
- エディションによる機能差(AI アシスタント・エージェントは Enterprise 以上)
- AI:OCI AI サービスの6アクション、ReAct と Plan & Execute の使い分け、統合をツールにする条件、MCP サーバーの有効化
- Web サービスの基礎(WSDL・SOAP・REST・JSON)も出題範囲です。REST API の基本 と SOAP Web サービス で復習してください
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”- Using Integrations in Oracle Integration 3
- 10 Things to Know Before You Start
- Understand Integration Styles
- About Projects
- Oracle Integration Editions
- How Features Impact Billing Messages
- Service Limits: Component Integrations
- Oracle Integration Service Roles
- AI Feature Availability
- How Integrations and AI Agents Fit Together
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