エンタープライズ構造(法的エンティティ・BU・元帳・参照データセット)
構成要素と役割
Section titled “構成要素と役割”| 構成要素 | 何を表すか | 主な関係 |
|---|---|---|
| 企業(Enterprise) | 組織全体の最上位 | 1 環境に 1 つ |
| 法的エンティティ(Legal Entity) | 法人格。登録・税・法定報告の単位 | 元帳のバランシング・セグメント値に割当 |
| 法的報告単位(Legal Reporting Unit) | 税務・法定報告のための事業所単位 | 法的エンティティに 1 つ以上 |
| 元帳(Ledger) | 会計記録の器(COA・カレンダー・通貨・会計方法) | プライマリ/セカンダリ/報告通貨 |
| 営業単位(Business Unit:BU) | 取引処理・データセキュリティ・マスタ共有の単位 | プライマリ元帳 1 つと既定の法的エンティティ |
| 参照データセット(Reference Data Set) | マスタ(支払条件など)を共有するグループ | BU などに割当 |
| ディビジョン(Division) | 事業部などの管理上の区分 | COA や組織階層で表現 |
企業・ディビジョン・部門
Section titled “企業・ディビジョン・部門”- 企業は全体の最上位の組織で、エンタープライズ構造の設定で最初に作られます
- ディビジョンは製品ライン・ブランド・地域などで事業を区分した、利益責任を持つ単位です。法的な構造とは一致しません。財務では COA のセグメントや階層で、HCM では管理組織の階層で表現します
- **部門(Department)**は HCM の組織で、従業員の所属に使います。財務の部門別管理は通常 COA のコストセンター・セグメントで行うため、部門とコストセンター値の対応ルールを決めておきます
法的エンティティ・法的管轄・法的報告単位
Section titled “法的エンティティ・法的管轄・法的報告単位”- 法的エンティティは、資産・負債を持ち、法律上の責任を負う法人です。事業を行う地域(法的管轄:Legal Jurisdiction)の行政機関(法的権限:Legal Authority)に登録します
- 法的管轄と法的権限は、複数の登録(Registration)を管理するために定義し、税(Fusion Tax)や給与が利用します
- **法的報告単位(LRU)**は、営業所などの物理的な拠点ごとに税務・法定報告を行う単位です。法的エンティティを作成すると、登録付きの法的報告単位が 1 つ自動で作られます
- 国より細かい単位(州・地方)で報告が必要な国では、法的報告単位を追加します
日本の消費税や適格請求書(インボイス制度)の登録番号の扱いは、税(Fusion Tax) の設定とあわせて確認してください。
元帳(プライマリ・セカンダリ・報告通貨)と元帳セット
Section titled “元帳(プライマリ・セカンダリ・報告通貨)と元帳セット”プライマリ元帳は主たる会計記録で、COA・カレンダー・通貨・会計方法(いわゆる 4C)を持ちます。補助元帳(AP・AR など)の取引は、ここに会計処理されます。
セカンダリ元帳は、プライマリ元帳と異なる COA・カレンダー・通貨・会計方法で記録したい場合(例:IFRS と日本基準の並行記帳)に使います。データの変換レベルを選びます。
| 変換レベル | 内容 |
|---|---|
| Balance | 残高を転送する(Transfer Balances to Secondary Ledger) |
| Journal | プライマリ元帳での転記時に仕訳をコピーする |
| Subledger | Create Accounting が両方の元帳の補助元帳仕訳を作る |
| Adjustment Only | 調整仕訳だけを持つ。COA・カレンダー・通貨はプライマリと同じ |
**報告通貨(Reporting Currency)**は、同じ取引を別の通貨でも保持・報告する仕組みで、Balance・Journal・Subledger の各レベルがあります。
**元帳セット(Ledger Set)**は、COA・カレンダー・期間タイプが同じ元帳をまとめたものです。期間のオープン/クローズ、レポートや処理の一括実行、配賦などを複数元帳に対して行えます。
法的エンティティ・元帳・BU の関係
Section titled “法的エンティティ・元帳・BU の関係”- プライマリ・バランシング・セグメントの値を、まずすべての法的エンティティに割り当てます。1 つの値を割り当てられる法的エンティティは 1 つです
- 法的エンティティに属さない取引(調整など)用の値は、元帳に直接割り当てます
- 財務取引を発生させるビジネス機能を持つ BU には、プライマリ元帳と既定の法的エンティティを割り当てます
バランシング・セグメントは最大 3 つまで使えます。法的エンティティ別の B/S に加え、事業別の B/S が必要な場合に 2 つ目以降を検討します。
BU とビジネス機能
Section titled “BU とビジネス機能”BU は、1 つ以上のビジネス機能を実行する組織の単位です。主な用途は、取引処理、取引データのセキュリティ、参照データの共有、管理会計上の集計です。ユーザーにはロールと BU の組み合わせでアクセス権を与えます(Manage Data Access for Users タスク)。
| ビジネス機能(例) | 主に使うモジュール |
|---|---|
| Payables Invoicing/Payables Payments | AP(請求書/支払) |
| Billing and Revenue Management/Customer Payments | AR(請求/入金) |
| Procurement/Requisitioning/Receiving | 調達・受入 |
| Materials Management | 在庫・原価 |
| Project Accounting | PPM |
| Expense Management | 経費 |
財務取引を発生させる機能(Payables Invoicing、Materials Management、Receiving など)を持つ BU には、プライマリ元帳と既定の法的エンティティが必須です。購買や支払を特定の BU に集約する「サービス・プロバイダ・モデル(共有サービスセンター)」もあります(調達の共通設定)。
参照データセットとセット割当
Section titled “参照データセットとセット割当”参照データセットは、マスタ(参照データ)をグループ化し、複数の BU などで共有するための入れ物です。全社共通のデータを定義する Enterprise というセットが用意されています。共有の方法は参照データの種類ごとに決まっています。
| 共有方法 | 例 | 取引入力時の候補 |
|---|---|---|
| 1 つのセットのみ、共通値なし | 資産の按分規則(Asset Prorate Conventions) | 割り当てたセットの値 |
| 1 つのセットのみ、共通値あり | AR の取引タイプ | BU のセット+共通セットの値 |
| 複数のセットに割当可、共通値なし | AP の支払条件 | BU に割り当てたセットの値 |
セットの割当単位(決定子)は、BU・原価組織・プロジェクト・ユニット・資産台帳などです。品目や仕入先サイトは独自の共有ロジックを持つため、各モジュールの説明で確認してください。
在庫組織・原価組織の位置づけ
Section titled “在庫組織・原価組織の位置づけ”- 在庫組織には利益センター BU を指定します。未指定だと、会社間取引の原価処理でエラーになることがあります
- 原価組織は複数の在庫組織をまとめて原価を管理します。まとめられるのは、同じ法的エンティティ・同じ利益センター BU・同じ品目マスタ組織の在庫組織です
- **原価帳簿(Cost Book)**には元帳を 1 つ割り当てます。取引の処理後は変更できません
設定・実装の手順
Section titled “設定・実装の手順”設定手段の選び方
Section titled “設定手段の選び方”| 手段 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| Enterprise Structures Configurator(ESC) | HCM を含む導入。複数の構成案を比較したい | オファリングで Enterprise Structures Guided Flow フィーチャーの選択が必要。ロードできる構成は 1 つ |
| Rapid Implementation(スプレッドシート) | 財務中心の導入で、COA・元帳・法的エンティティ・BU をまとめて作る | 初期作成専用。取込後は元帳と COA・カレンダー・通貨の組み合わせが確定する |
| 個別の設定タスク | 追加・変更、細かい属性の設定 | 依存関係の順序を守る |
ESC は、対話形式(インタビュー)で企業・ディビジョン・法的エンティティ・BU・参照データセットを作るツールです。構成案を作成 → レビュー → ロードの順に進め、ロード後は個別タスクで変更します。
Rapid Implementation の流れ
Section titled “Rapid Implementation の流れ”- Setup and Maintenance で、Define Financials Configuration for Rapid Implementation タスク・リストを含む実装プロジェクトを作成します
- Create Chart of Accounts, Ledger, Legal Entities, and Business Units in Spreadsheet タスクから、Rapid Implementation for General Ledger ワークブックをダウンロードします
- COA のセグメント・値・階層、法的エンティティと住所、BU、主要勘定(利益剰余金・現金・売掛金・買掛金など)、カレンダーの開始日と期間パターン、伝票番号の採番方針を記入します
- ワークブックから取込ファイルを作成し、アップロードします
これで COA(値セット・構造・インスタンス)、勘定階層、会計カレンダー(月次のみ)、法的エンティティ、プライマリ元帳、BU、採番ルールなどが作られます。
推奨する設定順序
Section titled “推奨する設定順序”- 地理(Geographies)と事業所(Locations):法的エンティティの住所に使います(参照タイプ・プロファイル・共通マスタ)
- COA:値セット → 構造 → インスタンス(COA・元帳)
- 会計カレンダー・通貨
- 法的管轄・法的権限 → 法的エンティティ → 法的報告単位・登録
- プライマリ元帳 → 法的エンティティとバランシング・セグメント値の割当 → セカンダリ元帳・報告通貨 → 会計構成の確定(Review and Submit Accounting Configuration)
- BU の作成 → ビジネス機能の割当(Assign Business Unit Business Function)→ 参照データセットの割当
- 在庫組織・原価組織・調達 BU など各モジュールの組織
- ユーザーへのデータアクセスの付与(セキュリティ設計)
設計例:日本の親会社+海外子会社
Section titled “設計例:日本の親会社+海外子会社”架空のサンプル商事グループ(日本の親会社、米国とシンガポールの子会社)の例です。
| 法的エンティティ | 通貨 | プライマリ元帳 | BU | バランシング値 |
|---|---|---|---|---|
| サンプル商事株式会社 | JPY | JP プライマリ元帳 | JP01 | 101 |
| Sample Shoji America Inc. | USD | US プライマリ元帳 | US01 | 201 |
| Sample Shoji Singapore Pte. Ltd. | SGD | SG プライマリ元帳 | SG01 | 301 |
設計の判断は次のとおりです。
- 元帳:国ごとに通貨と法定報告が異なるため、子会社ごとに現地通貨のプライマリ元帳を作ります。国内に複数の法人があっても、通貨・カレンダー・COA・会計方法が同じなら、1 つのプライマリ元帳に複数の法的エンティティ(それぞれ別のバランシング値)を持たせる構成も選べます
- COA:グループ共通の構造を 1 つにします。グループ報告がしやすく、カレンダーが同じなら元帳セットにまとめられます
- 会計年度:親会社が 4 月〜3 月、子会社が 1 月〜12 月のようにカレンダーが異なると、同じ元帳セットに入れられません。グループの換算・連結は、換算(Translation)や報告通貨、EPM の 連結決算(FCC) で行います
- 会計基準の差:親会社で IFRS 用の記録が必要で、差異が調整仕訳程度なら、Adjustment Only のセカンダリ元帳を検討します
- BU:法的エンティティごとに 1 つを基本とし、事業部ごとに取引データを分けて管理したい場合だけ BU を分けます
- 参照データ:支払条件など全社共通のものは共通のセット、国ごとに異なるものは国別のセットに置きます
関係を流れで表すと次のようになります。
サンプル商事株式会社(法的エンティティ)→ バランシング値 101 → JP プライマリ元帳(JPY)JP01 BU(Payables Invoicing など)→ 転記先:JP プライマリ元帳/既定の法的エンティティ:サンプル商事株式会社JP プライマリ元帳 → 報告通貨(USD など、必要な場合)/セカンダリ元帳(IFRS 調整、必要な場合)設計シート(CSV の例)
Section titled “設計シート(CSV の例)”設計内容は、設定前に表形式でレビューできる形にしておきます。
LegalEntity,Country,LedgerCurrency,PrimaryLedger,BalancingValue,BusinessUnit,BusinessFunctions,ReferenceDataSetサンプル商事株式会社,JP,JPY,JP Primary Ledger,101,JP01,"Payables Invoicing;Payables Payments;Billing and Revenue Management;Procurement",JP_SETSample Shoji America Inc.,US,USD,US Primary Ledger,201,US01,"Payables Invoicing;Payables Payments;Billing and Revenue Management",US_SETSample Shoji Singapore Pte. Ltd.,SG,SGD,SG Primary Ledger,301,SG01,"Payables Invoicing;Payables Payments",SG_SET設定内容の確認 SQL(BI Publisher)
Section titled “設定内容の確認 SQL(BI Publisher)”元帳と BU の対応を一覧にする例です。列名は使用前に Tables and Views で確認してください。
SELECT gl.name AS ledger_name, gl.ledger_category_code AS ledger_category, gl.currency_code, gl.period_set_name AS calendar, bu.bu_nameFROM gl_ledgers gl LEFT JOIN fun_all_business_units_v bu ON bu.primary_ledger_id = gl.ledger_idWHERE gl.ledger_category_code = 'PRIMARY'ORDER BY gl.name, bu.bu_name落とし穴とベストプラクティス
Section titled “落とし穴とベストプラクティス”- 報告要件(法定・管理・連結)を洗い出し、構造は報告から逆算して決めます。プライマリ元帳が少ないほど連結の手間は減ります
- プライマリとセカンダリの元帳通貨はできるだけそろえ、別通貨の見方は報告通貨や換算で実現します
- BU はデータを分けて管理する必要(セキュリティ・業務の独立性)がある単位で切ります。たとえば輸出と国内の取引を分けたい場合は BU を分けます
- 参照データの共有方針(共通セットに置くもの/国別に置くもの)を、マスタ移行の前に決めます
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- GL 模擬テスト:プライマリ元帳の 4C、セカンダリ元帳の変換レベル(Balance・Journal・Subledger・Adjustment Only)、報告通貨、元帳セットの条件、法的エンティティとバランシング・セグメント値の割当、Rapid Implementation で作成されるもの
- AP 模擬テスト・AR 模擬テスト:BU のビジネス機能、参照データセットの共有方法(AP の支払条件は複数セット、AR の取引タイプは共通値あり)
- 調達模擬テスト:調達 BU と購買依頼 BU、サービス・プロバイダ・モデル
- 在庫模擬テスト・受注模擬テスト:在庫組織と利益センター BU、品目マスタ組織、原価組織との関係
- 判断ポイント:「BU が転記できるプライマリ元帳は 1 つ」「1 つのバランシング値は 1 つの法的エンティティに」「元帳セットは COA・カレンダー・期間タイプが同じ元帳だけ」
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”- Implementing Common Features for Financials and Project Management(26D)
- Business Units
- Business Functions
- Reference Data Sets and Sharing Methods
- Overview of Legal Jurisdiction and Authorities
- Plan Legal Reporting Units
- Divisions
- How You Establish Enterprise Structures Using the Enterprise Structures Configurator
- Primary Ledgers, Secondary Ledgers, and Reporting Currencies
- Ledgers, Legal Entities, Balancing Segments, and Business Units
- Examples of Ledger Sets
- Overview of Enterprise Structures Rapid Implementation
- Important Points to Know Before Creating Cost Organization Relationships
- Profit Center Business Units
本サイトは学習目的で個人が作成した非公式の教材であり、Oracle Corporation およびその関連会社とは関係ありません。内容の正確性は保証しません。最新の仕様・試験範囲は必ず公式ドキュメントと Oracle University の情報で確認してください。
模擬テストの問題は公開されている出題範囲(Exam Topics)と公式ドキュメントをもとに独自に作成したもので、実際の試験問題ではありません。
Oracle、Java、MySQL は Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。その他の製品名・会社名は各社の商標です。
© 2026 Fusion ERP 実装ラボ