コンテンツにスキップ

標準機能とアドオンの考え方(Fit to Standard・RICEW・拡張手段の選び方)

SaaS で変えられるもの・変えられないもの

Section titled “SaaS で変えられるもの・変えられないもの”
  • 変えられないもの:アプリケーションのコードと、データベースへの直接アクセスです。Fusion にはデータベースへの直接接続がなく、外部とは API・ファイル・イベントで連携します(連携方式の全体像)。
  • 変えられるもの:構成(設定タスク)、パーソナライズ、拡張(フレックスフィールド、Visual Builder Studio など)、連携、PaaS の 5 つです。標準に近いものほど、アップデートの影響を受けにくくなります(拡張の全体像)。

原則は次の 3 つです。

  1. 設定が先:設定で済むものを拡張にしません。拡張で済むものを PaaS にしません。
  2. 公開された手段だけを使う:ドキュメントにない API や内部の画面構造への依存は、互換性が保証されず、アップデートで壊れます。
  3. 作ったものは自分たちの資産:Oracle が保守するのは標準機能と拡張の仕組みです。拡張の中身(ルール、SQL、連携フロー)は、設計書・ソース管理・テスト・台帳を含めて導入側が管理します。

SaaS の Fit & Gap は、オンプレミス時代と順序が逆です。「標準と合わない所を作り込む」のではなく、「業務を標準に合わせる」を先に検討します(このサイトの推奨する進め方です)。

  1. 要件を「達成したいこと」で書く:「支払日を自動計算するプログラムがほしい」ではなく「月末締め翌月末払いにしたい」と書きます。現行システムの機能名で書くと、現行踏襲の Gap が増えます。
  2. 標準を実演して当てる:業務シナリオ(P2P・O2C・R2R など)ごとに、テスト環境で標準の画面・設定・ジョブを動かして見せます。資料だけで判定しません。
  3. 判定する:下の表で分け、根拠(実演の結果、ガイドの該当ページ)を残します。
  4. Gap を分類し、方針を決める:下の検討順で判断します。
  5. 業務オーナーが合意する:Gap を作る・作らない、業務を変える・変えないは、業務側の責任者が承認します。
  6. 設計書・台帳・テストに反映する:作ると決めたものだけを台帳に登録し、受入基準をテスト項目にします。
  7. 見直す:標準は四半期ごとに増えます。AI 機能(事前構築のエージェントなど)も標準の一部として確認し、標準が追いついたアドオンは廃止します。
判定 意味 例(架空:サンプル商事) 対処
Fit 標準機能・既定の設定で満たす 月末締め翌月末払い(支払条件の Day of Month) 標準のまま使う
設定で Fit 設定・構成で満たす AP 請求書に管理番号を持たせる(DFF) 構成して設計書に記録
Gap:業務変更 業務側を標準に合わせれば解消する 部署独自の承認画面 → 標準の承認ルールと通知 業務オーナーと合意
Gap:運用回避 件数が少なく、手作業で統制できる 年 2 回だけの特殊な振替 → スプレッドシートで仕訳入力 手順書で運用
Gap:作る 必要性が高く、標準で代替できない 経費システムの請求書を AP に取り込む RICEW に分類して台帳へ
Gap の検討順(簡易版)
標準・設定で満たせる? ───────────── はい → Fit/設定で Fit
└ いいえ
業務を標準に合わせられる? ────────── はい → 業務変更
└ いいえ
手作業で統制できる件数・頻度? ────── はい → 運用回避
└ いいえ
法令・統制・外部との約束で必須? ───── はい → 作る(RICEW へ)
└ いいえ → 見送り(理由を記録し、リリースごとに再評価)

判断の観点は次のとおりです。

  • 法令・会計基準・内部統制で必須か。
  • 使う人数と頻度はどれくらいか。
  • 代替案のコスト(業務変更の負担、運用回避の統制リスク)はどうか。
  • 今後のリリースで標準化される見込みがあるか。Readiness で確認しますが、提供は約束ではないため、期限のある要件は待ちません。
  • 作った後の維持コスト(台帳、アップデート確認)に見合うか。

RICEW は、アドオンを成果物の種類で分ける呼び方です(Reports・Interfaces・Conversions・Extensions・Workflows)。区分ごとに「先に標準を確認する場所」と「使う手段」が決まります。

区分 典型例 主な手段 先に確認すること
R 帳票・分析 仕訳明細、請求明細書、経営ダッシュボード OTBI(照会・分析)、BIP(体裁が決まった帳票・大量出力・配信)、Financial Reporting Web Studio・Smart View(残高・財務諸表)、FDI(履歴・横断分析) 事前定義の分析・レポートで足りないか(レポーティング)
I 連携 外部システムとのデータ授受 REST・SOAP、FBDI+erpintegrations、BICC・Data Extraction、ビジネスイベント。実行基盤は OIC 標準の取込・送信機能で足りないか(連携方式)
C 変換・移行 初期データ・残高の移行 FBDI、ADFdi(スプレッドシート)、HCM Data Loader(人事)、FSM(設定データ) 移行手段の選択(データ移行)
E 拡張 項目の追加、画面の制御、新しい画面 DFF・EFF、VBS(Redwood ページ)、Page Composer・Application Composer(従来型)、PaaS(Visual Builder・APEX・OCI) 設定タスクで足りないか(拡張の全体像)
W ワークフロー 金額・部門別の承認、通知 承認ルール(BPM Worklist、各業務のルール設定)、ビジネスイベント+OIC(外部の稟議システムとの連携) 標準の条件・承認者で表現できないか(承認ワークフロー)
  • 1 つの要件が複数の区分にまたがります。「外部の請求書を取り込む」は I(連携)が中心ですが、取込時の変換(C)、エラー一覧(R)、承認(W)が付くことがあります。台帳では区分ごとの行に分け、複雑度を別々に付けます。
  • BIP を大量データの抽出に使うのは最後の手段です。BICC や Data Extraction ツールを先に検討します。
  • 画面で項目を隠しても、セキュリティにはなりません。権限はロールとデータアクセスで制御します。

台帳は、アドオンを 1 件 1 行で管理する表です。「作る」と決めたものだけを登録し、台帳に ID がないものは本番に出さない運用にします。拡張の全体像 の拡張一覧は、この台帳の E 区分を詳しくしたものです。

項目 書く内容 例(架空)
ID 区分と連番 I-001
要件 業務の言葉で 1 行 経費システムの請求書を AP に取り込む
Gap の理由 標準で足りない理由と、検討した代替案 取込形式が標準と合わない。取引先側を変えられない
実現手段 使う技術と拡張ポイント OIC+FBDI(importBulkData)
複雑度 S/M/L/XL(次の見積りの節) L
オーナー 業務側の責任者と、保守する担当 経理部・IT 部
影響範囲 触れるモジュール・テーブル・API・ジョブ AP、請求書インポート
アップデート時の確認 リリースごとに何を確かめるか FBDI テンプレートの版、ジョブ名
状態・廃止条件 稼働中/廃止予定。標準で代替できたら廃止する条件 稼働中。標準の取込が提供されたら再評価

実務では、スプレッドシートや CSV で管理します。次は記入例です。

addon-register.csv(アドオン台帳の例・架空)
ID,要件,Gap の理由,実現手段,複雑度,オーナー,影響範囲,アップデート時の確認,状態
R-001,取引先宛ての請求明細書を体裁指定の PDF で出力,標準の帳票では体裁が合わない,BIP,M,営業管理部/IT部,AR,データモデルの SQL と参照テーブル,稼働中
I-001,経費システムの請求書を AP に取込,取込形式が標準と合わない,OIC+FBDI,L,経理部/IT部,AP,FBDI テンプレートの版・ジョブ名,稼働中
E-001,AP 請求書に管理番号を追加し必須にする,標準項目がない(DFF で対応),DFF+VBS ルール,S,経理部/IT部,AP,項目の有無・ルールの評価,稼働中
W-001,高額案件の追加承認を外部の稟議システムと連携,承認結果を社内システムに残す必要,ビジネスイベント+OIC,L,購買部/IT部,調達,イベントの有効状態・承認者の決定,稼働中

運用のルールは次のとおりです。

  • ID を成果物の名前に付けます(BIP の /Shared/Custom 配下のレポート名、OIC の統合名、VBS の拡張名など)。
  • 変更は台帳の更新とセットにし、リリース判定に台帳の更新を含めます。
  • ソースを保管します。VBS は Git、OIC はプロジェクトのエクスポート、BI はカタログのアーカイブです(環境管理)。
  • 年に 1 回、使われていないものを棚卸して廃止します。

「標準にない」と判断する前に、次を確認します。

手がかり 分かること 注意点
要件を目的に言い換えて検索 公式の機能名(例:「締め支払」→ 支払条件の Day of Month) 英語 UI 名と公式ガイドの用語で探す
設定と保守(Setup and Maintenance) オファリング → 機能領域 → タスクの階層と、タスク検索 タスクがない場合は、先にオファリング・機能領域のオプトインを確認
My Enterprise の New Features・Offerings 最近追加された機能と、オプトインの要否 Allows Opt-In が空欄の機能は、有効にすると戻せない
公式ガイド 「Using ○○」は操作、「Implementing ○○」は設定が目安。REST API・Tables and Views・FBDI のガイドは技術面 対象リリース(26A〜26D)のガイドを見る
Readiness(What’s New・Feature Summary) 新機能、既定で有効になる変更、オプトイン期限 提供時期は約束ではない
事前定義のレポート・分析、AI 機能の一覧 作る前に既存の帳票・分析・AI 機能を探す 事前定義レポートは直接変更できず、/Shared/Custom にコピーして修正する
テスト環境での実演 実際に動くか。画面に出ない原因の切り分け 権限・オプトイン・BU や元帳の範囲が原因のことがある

確信が持てなければ、Oracle サポートに「標準で実現できるか」を問い合わせ、回答を台帳に残します(一般的な進め方です)。

四半期アップデート(26A〜26D)は、テスト環境に先に適用され、約 2 週間後に本番へ適用されます(環境管理)。この 2 週間に、台帳を使って確認します。

  1. 事前:Readiness の What’s New・Feature Summary と、台帳の「影響範囲」を突き合わせます。既定で有効になる変更、オプトイン期限があるもの、将来の動作変更の予定(Feature Updates)を拾います。
  2. テスト環境:台帳の全件について「アップデート時の確認」を実行します(回帰テスト)。API の疎通や主要帳票の件数は自動化します。
  3. 本番更新後:スモークテストで主要な連携・拡張の動作を確認し、結果を台帳に記録します。
区分 壊れやすい点 確認方法
R BIP のカスタム SQL が参照するテーブル・列、事前定義レポートの更新 主要帳票を実行し、件数・金額を前回と比較。カスタムは /Shared/Custom に置く
I・C FBDI テンプレートの列、REST の属性、ジョブ名・パラメータ、ドキュメントにない API 最新のテンプレートを取り直す。REST は Framework Version を固定。正常系と主要エラーを実行
E Redwood へのオプトイン(Page Composer の変更は引き継がれない)、VBS の実行時依存の更新、DFF の表示・必須 ルールの評価結果と項目の有無を確認
W 承認ルールの条件・属性、承認者の決定(HCM の階層)、通知 新しく起票した取引で承認を通す
  • オプトインは本番より先にテスト環境で評価し、採用・保留の判断を記録します。戻せないものは特に慎重に扱います。
  • サンドボックスは、更新の前に公開か削除をします。
  • 新リリースに上がったテスト環境で作った VBS の拡張は、旧リリースのままの本番へデプロイしません。

見積りの考え方(複雑度の分類)

Section titled “見積りの考え方(複雑度の分類)”

アドオンの費用は「作る費用」だけではありません。SaaS では、四半期ごとの確認が稼働している間ずっと発生します。

アドオン 1 件の費用
設計〜単体テスト
+ 結合・受入・回帰テスト、環境間の移送、手順書
+ 年間の確認(四半期ごと × 4 回 × 稼働年数)

複雑度は、区分ごとに次の目安で S/M/L に分けます。L を超えるもの(独自アプリ、複数システムをまたぐ連携など)は XL として個別に見積もります。

区分 S M L
R 帳票 既存のデータモデルへの項目追加、レイアウト変更 データモデル 1 本とテンプレート 複数データソース、バースト配信、大量出力
I 連携 1 方向・1 システム、単純な項目対応、少量 変換ルールあり、エラーの再処理あり 双方向、複数システム、大量、突合、即時性
C 移行 マスタ 1 種類、変換なし 取引 1〜2 種類、変換・名寄せあり 複数モジュールにまたがる残高・未決取引、複数回のリハーサル
E 拡張 DFF 数項目、VBS ルール数件 複数画面にまたがるルール、条件分岐 新規の App UI、PaaS アプリ
W 承認 金額帯だけの承認 部門・金額・費目の組合せ、承認グループ 外部ワークフローとの連携、動的な承認者

次は説明用の架空の基準値です。実績ではないため、自社・案件の実績で置き換えてください。

複雑度 設計〜単体(人日) 結合・受入・移送(人日) 年間の確認(人日)
S 3 2 1
M 10 6 3
L 25 15 6
  • この基準値では、L が 1 件増えると、5 年間で確認工数が 30 人日増えます。作る費用だけを比べると、アドオンを過小評価します。
  • 見積りに入れ忘れやすいものは、開発・追加テスト環境の費用(別途購入)、外部システム側の改修、テストデータの準備、ロールの設計、要件の確度が低い場合のリスクです。
  • 「作る費用+確認費」と「業務を変える費用」の比較を台帳に残すと、Gap の判断の根拠になります。

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”
  • Gap の判定は、リリースごとに見直します。標準機能と AI 機能は四半期ごとに増えます。
  • 設定・拡張・連携の判断理由を、台帳に残します。
  • このページ専用の試験はありません。関連する知識は、Redwood 模擬テスト(拡張の手段、VBS)、OIC 模擬テスト(連携方式の使い分け)、GL 模擬テスト などの実装系の試験(設定で満たせる範囲)で問われます。
  • 手段の順序は「構成 → パーソナライズ → 拡張 → 連携 → PaaS」です。データモデルの変更(フレックスフィールドなど)が先で、VBS で画面に出すのは後です。
  • 連携方式は、要求応答が REST と SOAP、発行・購読がビジネスイベント、大量取込が FBDI、大量抽出が BICC です。
  • 設定・拡張の環境間の移行手段は、設定データが構成パッケージ、画面の構成がマイグレーション・セット、VBS の拡張が VBS からのデプロイ、BI がカタログのアーカイブ、OIC がプロジェクトのエクスポートです。
  • Allows Opt-In が空欄の新機能は、一度有効にすると戻せません。

本サイトは学習目的で個人が作成した非公式の教材であり、Oracle Corporation およびその関連会社とは関係ありません。内容の正確性は保証しません。最新の仕様・試験範囲は必ず公式ドキュメントと Oracle University の情報で確認してください。

模擬テストの問題は公開されている出題範囲(Exam Topics)と公式ドキュメントをもとに独自に作成したもので、実際の試験問題ではありません。

Oracle、Java、MySQL は Oracle Corporation およびその子会社、関連会社の米国およびその他の国における登録商標です。その他の製品名・会社名は各社の商標です。

© 2026 Fusion ERP 実装ラボ