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EPM Cloud の全体像と Fusion ERP との関係

EPM Cloud は、計画・予算、連結決算、勘定照合、開示、マスタ管理、原価配賦といった経営管理の業務を担う SaaS です。ERP が「取引を記録して正しい帳簿を作る」システムであるのに対し、EPM は「集計した数値を使って計画し、連結し、説明する」システムです。R2R の終盤(決算・連結・報告)と、その先の計画(予算・予測)を受け持ちます。業務の流れ全体は R2R:記帳から決算・連結・EPM まで を参照してください。

観点 Fusion ERP EPM Cloud
環境・ユーザー ERP の環境とユーザー 別の環境(URL・ユーザー・ロール)。通常はビジネス・プロセスごとに環境を持つ
更新 四半期(26A〜26D) 月次。テスト環境は第 1 金曜、本番環境は第 3 金曜(Oracle Fusion Cloud ERP の全体像)
扱うデータ 取引・仕訳・残高 集計した数値(実績・計画)とメタデータ
設定の単位 組織(法的エンティティ・BU・元帳)と COA ディメンション・メンバー・キューブ
連携手段 FBDI・REST・BIP・OIC Data Integration・EPM Automate・REST API

ビジネス・プロセス(公式名)

Section titled “ビジネス・プロセス(公式名)”

「ビジネス・プロセス」は、用途別に構成済みの EPM アプリケーションを指す公式の用語です。名称は、EPM Automate の runIntegration の説明にある対象一覧と、Narrative Reporting・Enterprise Data Management です。

ビジネス・プロセス 主な用途 ERP との接点 ページ
Planning、Planning Modules 予算・予測・計画。Modules は用途別(Financials、Workforce、Projects、Capital)に構成済み 実績の取込、確定予算の書戻し Planning
FreeForm ディメンションを自由に設計するキューブ 実績の取込 Planning の設計
Sales Planning、Strategic Workforce Planning 営業計画、人員計画 人員データは HCM から取込 —
Financial Consolidation and Close(FCC) 連結決算、決算タスク GL 残高の取込 FCC
Tax Reporting 税務報告(税金費用・実効税率など) 実績の取込 —
Account Reconciliation(ARCS) 勘定照合、トランザクション・マッチング GL 残高・取引の取込 ARCS
Narrative Reporting レポート・パッケージ、開示資料 EPM のデータを利用 Narrative Reporting
Enterprise Data Management(EDM) マスタ(ディメンション)の統制と配信 ERP と EPM へ配信 EDM
Profitability and Cost Management、Enterprise Profitability and Cost Management 収益性・原価配賦 GL・原価データの取込 PCM
仕組み 内容
Essbase キューブ 多くのビジネス・プロセスは数値を Essbase のキューブに保存します。入力用と、集計・レポート用にキューブを分ける設計があります
ディメンションとメタデータ データの切り口(Account、Entity、Period など)の定義です。ファイルのインポート・エクスポートや EDM で管理します
セキュリティ 事前定義のロール(Service Administrator、Power User、User、Viewer)と、メンバー単位のアクセス許可を組み合わせます
Smart View Excel からの照会・入力です。GL の財務レポートでも使います
EPM Automate・REST API ジョブの実行、ファイル転送、環境の操作を自動化します(EPM データ統合)
環境とマイグレーション テストと本番を使い分け、スナップショットで移行します。更新は月次です
領域 Fusion ERP EPM Cloud
実績 取引・仕訳・残高の正(GL) ERP の残高を取り込んで参照・分析
計画・予算 GL に予算残高を持てる(予算統制にも使う) Planning で編成し、確定した予算を GL へ書き戻せる
連結 GL 内の簡易な連結(元帳セット・報告通貨・換算) FCC で消去・持分・連結仕訳
勘定照合 各モジュールと GL の照合 ARCS で照合の統制・取引照合
開示・管理レポート Financial Reporting・OTBI・BIP Narrative Reporting
マスタ GL の COA 値と階層 EDM で変更を申請・承認し、ERP と EPM に配信

使用する組織(EPM ではアプリケーション構造)

Section titled “使用する組織(EPM ではアプリケーション構造)”

EPM には、法的エンティティや BU のような ERP の組織設定はありません。代わりに、**アプリケーション → キューブ → ディメンション → メンバー(階層)**の構造を設計します。ERP の組織は、EPM ではディメンションのメンバー(主に Entity)として表します。

要素 内容 例(架空)
アプリケーション ビジネス・プロセスの実体 サンプル商事の Planning アプリ
キューブ 数値を持つ多次元データベース 入力用キューブ、レポーティング・キューブ
ディメンション データの切り口 Account、Entity、Period、Year、Scenario、Version
メンバーと階層 ディメンションの値と親子関係 Entity:JP01 → 国内 → グループ全体
別名・属性 表示名の別名、メンバーの属性 日本語の別名
アクセス許可 ロールとメンバー単位の権限 Entity 階層ごとの閲覧・入力

ERP の COA と EPM ディメンションの対応は、設計の最初に決めます(Data Integration のマッピングで使います)。

ERP(COA・カレンダー) EPM のディメンション 注意
会社(貸借一致セグメント) Entity 法的エンティティと Entity の対応を揃える
勘定科目 Account 集計用に粗くすることが多く、多対 1 のマッピングになる
部門・製品・地域など Department、Product など ディメンションを増やしすぎると性能と運用の負荷が増える
会計期間 Period と Year 会計年度の開始月と年の表記を先に決める

月次決算の例です(会社・営業日は架空)。

  1. ERP でサブレジャーと GL の期間をクローズし、残高を確定する(3 営業日目など)
  2. Data Integration で GL の実績残高を EPM に取り込む(再実行できる設計にする)
  3. FCC で換算・消去・持分・連結仕訳を処理し、ARCS で勘定照合を進める
  4. Narrative Reporting のレポート・パッケージで管理レポートや開示資料を作る
  5. Planning で予実を分析し、予測を更新する
  6. 予算が確定したら、ERP で使う場合に GL へ書き戻す

年次の予算編成は、Planning で目標設定 → 部門入力 → 承認 → 確定の順に進めます。

マスタ 内容 作成場所・UI 移行手段
ディメンション・メンバー・階層(別名・属性を含む) Account、Entity など 各ビジネス・プロセスのディメンション画面 メタデータのファイル取込、EDM からの配信
ユーザー・ロール・アクセス許可 誰が何を見られるか アクセス制御の画面 ファイル取込、EPM Automate
統合定義 アプリケーション登録、マッピング Data Integration マイグレーション(スナップショット)

作成順序(依存関係)は次のとおりです。

  1. 環境とアプリケーションの作成(ビジネス・プロセスの選択)
  2. Year・Period・Scenario・Version などの共通ディメンション
  3. Entity・Account など業務ディメンションと階層(ERP の COA 値と整合させる)
  4. セキュリティ(ロールとアクセス許可)
  5. Data Integration(アプリケーション登録 → 期間・カテゴリのマッピング → 統合 → メンバー・マッピング)
  6. 実績の取込と検証。その後にフォーム・ルール・レポートを作る
連携 データ 仕組み 補足
GL → EPM 実績残高 Data Integration の直接連携 EPM データ統合
EPM → GL 予算、実績の調整仕訳 Data Integration の書戻し ERP 側で残高キューブとシナリオを先に作る
Budgetary Control ↔ EPM コミットメント等の取込、予算の書戻し Data Integration 予算統制を使う場合
サブレジャー → EPM 取引データ Data Integration 明細が必要な分析向け
HCM → EPM 従業員属性・給与・職務情報 Data Integration 人員計画向け
PPM ↔ Planning プロジェクトの予算・実績 PPM の実装ガイド「Project Integrations」の章 予算・予測・実行管理
EDM → ERP・EPM ディメンション(マスタ) EDM の配信 共通マスタデータの設計
Fusion ERP(GL・サブレジャー)
└ 月次:確定した残高(実績)
→ Data Integration → FCC(連結)/Planning(予実)/ARCS(照合)
← 予算・調整仕訳の書戻し(Data Integration)
EDM:勘定科目・部門などの変更を申請・承認 → Fusion GL と各 EPM アプリへ配信
運用:スケジューラ → EPM Automate/REST → 統合・パイプラインを実行 → ログで確認

まず標準の Data Integration で組めるかを確認します。判断の考え方は 標準機能とアドオンの考え方 と同じです。

要件 先に検討する標準機能 アドオンを考える場合
ERP の実績を EPM へ Data Integration の直接連携 取込前に複雑な加工が必要なとき(OIC など)
ERP 以外の基幹システム ファイル型の統合 オンプレミス DB は EPM Integration Agent
夜間の自動実行 EPM Automate、REST API、パイプライン 全社のジョブ管理製品(JP1 など)からの起動
  • ERP を実績の唯一の正とします。EPM 側で実績を手修正せず、ERP で修正して再取込します。EPM 発の修正は調整仕訳として ERP へ戻します。
  • マスタは EDM か ERP を起点に統制し、EPM のメンバー追加は申請と承認を経ます。
  • 統合は再実行できる設計にします。取込モードは Replace を基本とし、Append は追記の用途に限ります。
  • 統合の実行は専用のサービス・アカウントで行い、個人のアカウントに依存しません。
  • 月次更新の後はテスト環境で回帰テストをします。環境ごとに更新日が違うため、連携はテスト同士、本番同士で組みます。
  • アンチパターン:仕訳明細レベルのデータを EPM に持ち込む、ERP の組織を EPM に細かく再現する、ディメンションを増やし続ける。
  • 会計年度と期間・年の表記:4 月始まりの会社は、ERP の会計期間と EPM の Year・Period メンバーの対応を最初に決めます。2026 年 4 月の年を FY26 とするか FY27 とするかで、期間マッピングと取込コマンドの期間指定({Apr#FY26} など)が変わります。GL への書戻しは、期間を 1 会計年度内に収める必要があります。
  • 日本語の名称:メンバー名はコード、日本語は別名で持つ設計が一般的です。画面言語とドキュメントの日本語対応の範囲は、リリースにより異なるため公式で確認してください。
  • 通貨と単位:円建て(小数なし)のデータと、百万円単位の表示を使い分けます。保持する単位と表示の単位を先に決めます。
  • 連結の会計基準:日本基準・IFRS・米国基準を併用する場合の持ち方は設計判断です。ERP ではセカンダリ元帳、EPM ではシナリオなどの切り口で表す案を比較します。
  • 決算スケジュール:ERP のクローズ → EPM 取込 → 連結 → 報告の順を営業日に割り付けます。日次メンテナンスと月次更新の時間帯を避けてジョブを組みます。
  • ファイル:日本語を含むファイルは、文字コード(UTF-8 を推奨)と区切り文字を送信側と合わせ、テストで確認します。
  • 制度対応:消費税・インボイス制度・電子帳簿保存などの取引レベルの対応は ERP の領域です。EPM に固有の日本向け機能の有無は、公式ドキュメントで確認できていません。
項目 名称(公式のドキュメントで確認できたもの) 用途
EPM Automate runIntegration Data Integration の統合を実行する。旧 runDataRule の後継
EPM Automate runPipeline パイプラインを実行する(2025 年に追加)
ERP の ESS ジョブ Create General Ledger Balances Cube GL 残高キューブの作成(書戻しの前提)
ERP の ESS ジョブ Create Scenario Dimension Members シナリオ・メンバーの作成(書戻しの前提)
EPM のロール Service Administrator、Power User runIntegration を実行できるロール
画面 Applications、Period Mapping、Map Dimensions、Map Members 統合の設定(EPM データ統合)
試験 模擬テスト 学習ページ
EPM Data Integration(1Z0-1133-26) EPM連携 模擬テスト EPM データ統合
Planning Planning 模擬テスト Planning の全体像
FCC FCC 模擬テスト FCC の全体像
  • ARCS・Narrative Reporting・EDM・PCM の模擬テストは、各ビジネス・プロセスのページ(ARCS、Narrative Reporting、EDM、PCM)から開けます。
  • Oracle 日本語サイトの試験一覧(2026 年 10 月確認)では、Planning・FCC・Narrative Reporting・EDM の日本語版はいずれも 50 問・90 分・合格 68% です。1Z0-1133 は一覧に掲載がなく、問題数・時間・合格ラインは公式ページを読めず未確認です。
  • 覚えること:EPM は ERP と別製品(環境・更新・ロールが別)、ビジネス・プロセスの名称と用途、実績は ERP・計画と連結は EPM という分担、ビジネス・プロセス間の連携では両者のリリースレベルを揃えること。

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