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データ移行・インポート手段の全体像と選び方

移行するデータは 4 種類に分けると整理しやすくなります。種類によって使う手段と移行の順序が変わります(順序は 移行設計 で扱います)。

データの種類 例 主な入れ方
設定データ 元帳、ビジネス・ユニット(BU)、支払条件、参照タイプ 設定画面、機能設定マネージャ(FSM)の設定データ移行、Rapid Implementation
マスタデータ 仕入先、顧客、品目、従業員 FBDI、REST、HCM Data Loader(従業員)
残高 GL 残高、在庫の手持数量、固定資産 FBDI(仕訳・在庫取引・資産追加として取り込む)
未決トランザクション 未払の請求書、未入金の請求書、未完了の購買オーダー FBDI、スプレッドシート、REST

設定データの移行は 機能設定マネージャ(FSM)とセットアップデータの移行 で扱います。このセクションでは主にマスタ・残高・トランザクションを扱います。

手段 仕組み 向いている用途 自動化 主な制約
FBDI Excel テンプレート → CSV → zip → UCM → ESS ジョブでインタフェース表 → 本表 初期移行、定期的な一括取込 可(erpintegrations・OIC) テンプレートの列構成を守る。エラーはインタフェース表で確認・修正
ADFdi(スプレッドシート) Fusion と接続した Excel ワークブックで入力し、アップロード 仕訳・請求書の入力、取込エラーの修正 不可(人が操作) Excel アドインが必要。ワークブックがある業務に限られる
REST API HTTP で 1 件ずつ作成・更新 外部システムからの随時登録、少量の補正 可 大量件数には不向き。扱える属性はリソースごとに違う
HCM Data Loader(参考) 区切りテキスト(.dat)で HCM のビジネス・オブジェクトを一括ロード 従業員・組織など HCM のデータ 可(Web サービス) ERP の取引データには使わない
Rapid Implementation 専用ワークブックから設定ファイルを生成してアップロード COA・会計カレンダー・元帳・法的エンティティ・BU の初期設定 不可 一度きりの初期化用。作成後の変更は画面で行う

それぞれの要点は次のとおりです。

  • FBDI:業務ごとに Excel テンプレート(.xlsm)が用意されています。CSV を zip にして UCM(WebCenter Content)にアップロードし、ESS ジョブで取り込みます。詳しくは FBDI。
  • ADFdi:ADF Desktop Integration の略です。Excel アドインを入れた端末で、仕訳や請求書をまとめて入力できます。詳しくは ADFdi。
  • REST API:たとえば AP 請求書は invoices、AR 請求書は receivablesInvoices、仕入先は suppliers(子リソースにサイト・連絡先・住所)があります。基本は REST API の基本。
  • HCM Data Loader(HDL):HCM 製品のビジネス・オブジェクトを、区切りテキスト(.dat)やスプレッドシートから一括ロードする手段です。ERP 側でも、購買担当者・承認者・経費精算者になる従業員のデータは HCM 側で用意します。
  • Rapid Implementation:GL の Enterprise Structures Rapid Implementation は、1 つのワークブックで COA(値セット・値・構造)、勘定階層、月次の会計カレンダー、法的エンティティ、主元帳、BU などを作ります。公式に「一度きりの初期化用」とされています。

FBDI は画面からも実行できますが、定期連携や移行の繰り返しでは自動化します。

  • erpintegrations(REST)/ErpIntegrationService(SOAP):importBulkData を 1 回呼ぶと、UCM へのアップロードから取込ジョブの投入まで進みます。詳しくは ERP Integration Service。
  • OIC の ERP Cloud アダプタ:Import Bulk Data into Oracle ERP Cloud で FBDI を呼び、完了はビジネスイベント(ErpImportBulkDataEvent)によるコールバックで受け取れます。詳しくは 接続とアダプタ。
  1. オブジェクトにある手段を確かめる:FBDI ガイド(File-Based Data Import for Financials/Procurement/SCM など)と REST API ガイドで、対象オブジェクトのテンプレートとリソースを探します。画面で入力できる項目が、FBDI や REST でも使えるとは限りません。
  2. データ量と頻度を見積もる:平常時とピーク時(月末・移行時)の件数を出します。
  3. 誰が実行するかを決める:業務担当者が手で入れるならスプレッドシート、システムが自動で入れるなら FBDI(自動化)か REST です。
  4. エラーの直し方を決める:1 件ずつ成否を返したいなら REST、まとめて取り込んでエラー行だけ直すなら FBDI です。FBDI は取込のエラーがインタフェース表に残ります。
  5. 監視と運用を決める:FBDI は ESS ジョブで動きます。投入の間隔、同時実行、通知を ESS の考え方で設計します。

次の表は社内の基準を作るときの出発点です。件数は公式の閾値ではありません。リハーサルで処理時間を測って調整します。

状況 第一候補 理由
初期移行(全件を一度に) FBDI 大量件数をまとめて検証・取込でき、エラー行だけ直せる
定期的な一括取込(日次・月次で数百件以上) FBDI + erpintegrations/OIC ファイル単位で処理でき、ジョブで監視できる
担当者が月に数十〜数百件を入力・修正 ADFdi Excel の操作性で入力でき、アップロード時に検証される
外部システムから 1 件ずつ即時に登録 REST 応答ですぐ成否が分かる
数件の補正 画面または REST 手段を用意する手間のほうが大きい

主要オブジェクト別の推奨手段

Section titled “主要オブジェクト別の推奨手段”

初期移行での推奨です。テンプレート名とインポート・プロセス名は 26C の FBDI ガイドで確認したものです。リリースで変わることがあるため、使う前に対象リリースのガイドで確認します。

オブジェクト 推奨手段 FBDI テンプレート → インポート・プロセス 代替・補足
仕入先 FBDI SupplierImportTemplate.xlsm → Import Suppliers 住所・サイト・サイト割当・連絡先は別テンプレート。少量は REST suppliers
仕入先銀行口座 FBDI SupplierBankAccountImportTemplate.xlsm → Import Supplier Bank Accounts 作成のみで、更新には使えない
顧客 FBDI CustomerImportTemplate.xlsm → Import Trading Community Data in Bulk パーティ・サイト・アカウント・プロファイル・入金方法を 1 テンプレートで扱う
品目 FBDI ItemImportTemplate.xlsm → Item Import 改訂・カテゴリ割当・関連・組織割当を含む
COA の値・階層 Rapid Implementation(初期)/FBDI Import Segment Values and Hierarchies 勘定組合せは Import Account Combinations
GL 残高・仕訳 FBDI JournalImportTemplate.xlsm → Import Journals 残高は移行仕訳として取り込む。少量は仕訳スプレッドシート
AP 未払請求書 FBDI PayablesStandardInvoiceImportTemplate.xlsm → Import Payables Invoices 前払請求書は FBDI テンプレートで作れない。少量は REST invoices
AR 未収(未決済の取引) FBDI AutoInvoiceImportTemplate.xlsm → Import AutoInvoice 少量は REST receivablesInvoices
AR 入金(未消込) FBDI ReceivablesStandardReceiptImportTemplate.xlsm → Process Receipts Through Lockbox ロックボックス形式で取り込む
固定資産 FBDI FixedAssetMassAdditionsImportTemplate.xlsm → Post Mass Additions 償却累計額などの扱いは 資産のライフサイクル で設計
購買オーダー(未完了) FBDI POPurchaseOrderImportTemplate.xlsm → Import Orders 少量は REST draftPurchaseOrders
在庫残高(手持数量) FBDI InventoryTransactionImportTemplate.xlsm → Create Inventory Transactions 在庫取引として計上する。取引原価の列もある
従業員 HCM Data Loader (HCM 側の手段) 購買担当者・承認者に必要

補足です。

  • 在庫には Inventory Balance Message Import(Manage Inventory Balances Process)という別の取込もあります。用途の違いは SCM の FBDI ガイドで確認してから選びます。
  • 受注(未出荷の受注)は Order Management の取込を使います。受注入力・受注インポート を参照してください。

移行設計では「オブジェクト × 手段 × 件数 × 担当」を一覧で管理します。次は移行対象一覧の例です(値は架空)。

移行対象一覧(例)
No,オブジェクト,手段,テンプレート/リソース,インポート・プロセス,想定件数,担当,依存先
1,仕入先,FBDI,SupplierImportTemplate.xlsm,Import Suppliers,1200,調達チーム,-
2,仕入先サイト,FBDI,SupplierSiteImportTemplate.xlsm,Import Supplier Sites,1800,調達チーム,1
3,顧客,FBDI,CustomerImportTemplate.xlsm,Import Trading Community Data in Bulk,3500,AR チーム,-
4,GL 期首残高,FBDI,JournalImportTemplate.xlsm,Import Journals,5000,GL チーム,COA
5,AP 未払請求書,FBDI,PayablesStandardInvoiceImportTemplate.xlsm,Import Payables Invoices,800,AP チーム,1;2
6,外部経費の請求書(稼働後),FBDI+importBulkData,同上,Import Payables Invoices,日次 50,連携チーム,5

落とし穴とベストプラクティス

Section titled “落とし穴とベストプラクティス”

ベストプラクティスは次のとおりです。

  • 手段は移行対象一覧で決める:オブジェクトごとに手段・テンプレート・件数・担当・依存先を一覧にし、設計レビューで合意します。
  • リハーサルで時間を測る:件数だけでなく、ロード・インポート・会計処理にかかる時間を測ります。
  • 自動化するなら最初から前提にする:移行を何度も繰り返すなら、ジョブ名・パラメータ・UCM アカウントを設計書に書き、erpintegrations のスクリプトで再実行できるようにします。

業務モジュールの実装試験では、データの取込手段が業務の文脈で問われます(出題テーマの目安です)。

覚えておくことです。

  • FBDI は「ロード(Load Interface File for Import)」と「インポート(業務ごとのプロセス)」の 2 段階
  • 大量・定期は FBDI、少量・即時は REST、担当者の入力はスプレッドシート
  • Rapid Implementation は初期化専用で、作成後の基本構成(元帳と COA・カレンダー・通貨)は変更できない

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