セキュリティの基本(ロールベースアクセス制御)
アクセス制御の 3 要素
Section titled “アクセス制御の 3 要素”Oracle は ERP のセキュリティを「誰が(who)・何を(what)・どのデータに対して(which data)できるか」の組合せで説明しています。
| 要素 | 決めるもの | 主な設定場所 |
|---|---|---|
| 誰が | ユーザー・アカウント | Security Console、Manage Users タスク |
| 何を | ロール(機能セキュリティ+データセキュリティ・ポリシー) | Security Console |
| どのデータに | セキュリティ・コンテキスト(BU・データアクセスセット等) | Manage Data Access for Users タスク |
例:サンプル商事株式会社の AP 担当者(架空)に Accounts Payable Specialist ロールと「JP01 営業単位」のデータアクセスを与えると、JP01 の請求書だけを入力・照会できます。ロールだけでは、どの BU の請求書も扱えません。
ロールの種類
Section titled “ロールの種類”| 種類 | 何を表すか | 例(事前定義) | ユーザーへの直接付与 |
|---|---|---|---|
| ジョブロール(Job role) | 組織の中の仕事 | General Accountant、Accounts Payable Specialist | できる |
| 抽象ロール(Abstract role) | 仕事に依存しない立場 | Enterprise Resource Planning Self Service User | できる |
| 職務ロール(Duty role) | 仕事の中のタスク群 | Payables Invoice Creation、Account Balance Review | できない |
| 集約権限(Aggregate privilege) | 1 つの機能権限+関連データポリシー | Supplier Profile Viewing Using REST Service | できない |
- 職務ロールはジョブロール・抽象ロールに継承させて使います。コピー・編集できます
- 集約権限は事前定義のみです。作成・編集・コピーはできず、1 つのかたまりとして階層に組み込みます
- データロール(Data role)は HCM 専用の仕組みで、ERP では使いません
ロールの継承
Section titled “ロールの継承”ロールは入れ子の階層です。ユーザーは付与されたロールの配下にある権限をすべて継承します。
ユーザー → ジョブロール/抽象ロール → 職務ロール → 職務ロール・集約権限 → 機能セキュリティ権限・データセキュリティ・ポリシー
例えば Accounts Payable Specialist は、Payables Invoice Creation(請求書の作成)、Payables Invoice Inquiry(照会)、Supplier Profile Inquiry(仕入先の照会)などの職務ロールを継承しています。正確な階層は「Security Reference for Financials」の各ロールのページで確認できます。
機能セキュリティとデータセキュリティ
Section titled “機能セキュリティとデータセキュリティ”| 区分 | 制御するもの | 例 |
|---|---|---|
| 機能セキュリティ権限(function security privilege) | どの画面・タスク・API を使えるか | Create Payables Invoice(AP_CREATE_PAYABLES_INVOICE_PRIV) |
| データセキュリティ・ポリシー(data security policy) | どの業務オブジェクトのどの行に何ができるか | 「認可された BU の標準請求書に対する Manage Payables Invoice」 |
データセキュリティ・ポリシーは 4 つの部品でできています。
- ポリシーを持つロール(例:Payables Invoice Creation)
- 対象の業務オブジェクト(例:Payables Standard Invoice)
- 行を絞る条件(例:ユーザーが認可されている BU のもの)
- 許可する操作=データ権限(例:Manage Payables Invoice (Data))
3 の「認可されている BU」を個々のユーザーに与えるのが、後述のデータアクセス付与です。ロール(ポリシー)とデータアクセスはセットで初めて効きます。
事前定義ロールと ORA_ コード
Section titled “事前定義ロールと ORA_ コード”Oracle が提供する事前定義ロール(セキュリティ・リファレンス実装)は、ロールコードが ORA_ で始まります。ORA_ で始まるロールは編集できません。公式ドキュメントに記載のあるコードの例は次のとおりです。
| ロール名 | ロールコード | 用途 |
|---|---|---|
| Application Implementation Consultant | ORA_ASM_APPLICATION_IMPLEMENTATION_CONSULTANT_JOB |
すべての設定タスク |
| Financial Application Administrator | ORA_FUN_FINANCIAL_APPLICATION_ADMINISTRATOR_JOB |
財務の設定タスク(運用期の設定管理) |
| IT Security Manager | ORA_FND_IT_SECURITY_MANAGER_JOB |
Security Console・ユーザー・ロール管理 |
| Authenticated User | ORA_FND_AUTHENTICATED_USER_ABSTRACT |
サインインした全ユーザー |
| Payroll Manager(HCM の例) | ORA_PAY_PAYROLL_MANAGER_JOB |
給与管理 |
ジョブロールは末尾が _JOB、抽象ロールは _ABSTRACT になっています。ほかのロールのコードは Security Console のロール検索結果で確認できます。
主な ERP の事前定義ジョブロール(名前)は次のとおりです。
- GL:General Accounting Manager、General Accountant、Financial Analyst
- AP:Accounts Payable Specialist、Accounts Payable Manager
- 調達:Buyer、Category Manager、Procurement Manager、Procurement Application Administrator
- 購買依頼:Procurement Requester、Procurement Preparer、Advanced Procurement Requester
- SCM:Warehouse Manager、Inventory Manager、Cost Accountant、Receiving Agent、Shipping Manager、Order Manager
Security Console
Section titled “Security Console”Security Console は、ロール・ユーザー・パスワード方針などを管理する画面です。
- ナビゲーション:ナビゲータ > Tools > Security Console
- 必要なロール:IT Security Manager(職務ロール Security Management と Security Reporting を継承)
| タブ | できること |
|---|---|
| Roles | ロールの作成・コピー・編集・比較、階層の可視化、Simulate Navigator |
| Users | ユーザー・アカウントの作成・編集・ロック・削除、ロール付与、パスワードのリセット |
| Analytics | ロールカテゴリ別の統計、データリソースごとのポリシー・ロール・ユーザー |
| User Categories | ユーザーのグループ化、カテゴリ別のパスワード方針・通知 |
| Certificates | PGP・X.509 証明書の生成・インポート・エクスポート |
| Administration | ユーザー名の生成規則、ロールコピー時の接頭辞・接尾辞、ロールコピーの状況 |
| Single Sign-On | SAML による SSO の設定(OCI IAM アイデンティティ・ドメインへ移行前の環境) |
Security Console は裏側で LDAP(アイデンティティ・ストア)と同期しています。次の 3 つのスケジュール済プロセス(Scheduled Processes)を押さえてください。
| プロセス | 役割 | 実行タイミング |
|---|---|---|
| Retrieve Latest LDAP Changes | LDAP の内容をアプリケーションのセキュリティ表へ反映 | 導入開始前に 1 回、リリース更新後、不整合が疑われるとき |
| Import User and Role Application Security Data | ユーザー・ロール・権限・ポリシーを取り込む | 毎日(Send Pending LDAP Requests の後) |
| Send Pending LDAP Requests | ユーザー作成・ロール付与の要求を LDAP へ送る | 毎日のスケジュール実行(一括登録の後も) |
設定・実装の手順
Section titled “設定・実装の手順”手順1:実装ユーザーを作成する
Section titled “手順1:実装ユーザーを作成する”導入初期は、設定作業をする「実装ユーザー」を Security Console で作ります。IT Security Manager ロールでサインインして操作します。
- ナビゲータ > Tools > Security Console > Users タブ > Add User Account
- Associated Person Type:ワーカー(人)レコードに紐付けるなら Worker、紐付けないなら None
- User Information:User Category(パスワード方針とユーザー名規則が決まる)、氏名、パスワードを入力
- Roles セクションで Add Role → ロールを検索 → Add Role Membership
- 必要なら Add Auto-Provisioned Roles(ロール・マッピングで対象になるロールを追加)
- Save and Close
実装ユーザーに付ける代表的なロールは Application Implementation Consultant(設定タスク全般)、IT Security Manager(セキュリティ)、Financial Application Administrator(財務設定)です。Application Implementation Consultant はすべての保護対象オブジェクトを参照できる強いロールなので、本番環境では担当者と期間を絞ってください。
手順2:業務ユーザーを作成する
Section titled “手順2:業務ユーザーを作成する”業務で使うユーザー(アプリケーション・ユーザー)は、人レコードと一緒に作るのが基本です。Security Console で作るアカウントは実装ユーザー向けと位置づけられています。
| 方法 | 用途 | 人レコード |
|---|---|---|
| Manage Users タスク(Create User) | 1 件ずつ作成 | 作成される |
| HCM Data Loader(Data Exchange 作業領域の Import and Load Data) | 一括登録 | 作成される |
| Hire an Employee | HCM を導入している場合 | HCM 側で作成 |
- ユーザー・アカウントを自動で作成・維持するかは、User and Role Provisioning のオプション(Manage Enterprise HCM Information タスク)で決めます
- 別の ID 管理製品でユーザーとロールを配布する場合は、このオプションで自動作成を止めます
- 一括登録の前にロール・マッピングを作っておきます。対象のマッピングがないとロールなしのアカウントになり、Send Pending LDAP Requests の完了時に停止(suspend)されます
手順3:ロール・プロビジョニング・ルールで自動付与する
Section titled “手順3:ロール・プロビジョニング・ルールで自動付与する”ロール・マッピング(ロール・プロビジョニング・ルール)は「この条件のアサインメントを持つ人にこのロールを付ける」というルールです。
- 設定および保守(Setup and Maintenance)> 機能領域 Users and Security > タスク Manage Role Provisioning Rules
- Manage Role Mappings ページの検索結果で Create
- Conditions に条件を入力(例:Department、Job、Location、System Person Type、HR Assignment Status)
- Associated Roles で Add Row → Role Name でロールを選択
- 付与方法を選択して Save and Close
- スケジュール済プロセス Autoprovision Roles for All Users を実行(マッピングの作成・変更後と、人レコードの一括登録後)
| 付与方法 | 意味 |
|---|---|
| Autoprovision | 条件を満たす人に自動付与(既定で選択済み) |
| Requestable | 条件を満たす人が、他のユーザーにこのロールを付与できる |
| Self-requestable | 条件を満たす人が、自分用にこのロールを要求できる |
設定例(架空):
- マッピング「Employee」:System Person Type = Employee、HR Assignment Status = Active → Enterprise Resource Planning Self Service User(Autoprovision)
- マッピング「JP01 AP 担当」:Department = 経理部、Job = AP 担当 → AP 担当者用のカスタムロール(Autoprovision)
手順4:データアクセスを付与する
Section titled “手順4:データアクセスを付与する”ジョブロールごとに、使ってよい BU・元帳などを付与します。
- IT Security Manager か Application Implementation Consultant でサインイン
- 設定および保守 > タスク Manage Data Access for Users を検索して開く
- Users without Data Access(未付与のユーザー)か Users with Data Access(追加付与)を選択
- Security Context(例:Business Unit)を選び、Role などで検索
- Authorize Data Access でスプレッドシート(Excel)を開く
- 行ごとに Security Context と Security Context Value(例:JP01 営業単位)を入力
- スプレッドシートで Upload し、Upload 列の状態と Manage Data Access for Users ページで結果を確認
主なセキュリティ・コンテキストは製品ごとに次のとおりです。
| 製品 | セキュリティ・コンテキスト |
|---|---|
| Financials | Business Unit、Data Access Set、Ledger、Asset Book、Control Budget、Intercompany Organization、Reference Data Set、Legal Entity |
| SCM | Inventory Organization、Cost Organization、Manufacturing Plant、Reference Data Set |
| Procurement | Business Unit |
| PPM | Project Organization Classification |
モジュール固有の付与方法も覚えておきます。
- GL:データアクセスセット(Data Access Set)で元帳・元帳セット・第一貸借一致セグメント値(会社など)へのアクセスを与えます。種類は Full Ledger と Primary Balancing Segment Value、アクセスレベルは読取専用か読取・書込です。元帳を作成すると、その元帳のデータアクセスセット(読取・書込)が自動で作られます。ユーザーへの付与は Manage Data Access Set Data Access for Users タスクです
- 調達:購買担当者などは Manage Procurement Agents タスクで「調達エージェント」として登録します。調達 BU、操作(Manage Purchase Orders など)、他のエージェントの文書へのアクセスレベル(None/View/Modify/Full)を設定します。エージェント登録には従業員としての登録が前提です
- 購買依頼:Procurement Requester は主たるアサインメントの BU に暗黙でアクセスできます。ほかの BU は Manage Business Unit Data Access for Users で明示的に付与します
- SCM:在庫組織・原価組織などを、ロールごとにセキュリティ・コンテキストとして付与します
作業割当の属性からデータアクセスを自動付与するデータ・プロビジョニング・ルールもあります。対象のコンテキストや設定方法はリリースにより異なるため、公式ドキュメントで確認してください。
手順5:付与結果を確認する
Section titled “手順5:付与結果を確認する”- Security Console の Roles または Users で対象を選び、メニューから Simulate Navigator を実行します。Show Access Granted で、実際に表示されるメニューだけを確認できます
- メニュー項目を選んで View Roles That Grant Access を使うと、その画面に必要なロールを逆引きできます
- スケジュール済プロセス User Role Membership Report で、ユーザーごとのロール付与を CSV で一覧にできます
ERP のみ導入時のユーザー管理の考え方
Section titled “ERP のみ導入時のユーザー管理の考え方”HCM を導入しない場合でも、次の点を先に決めておくと手戻りが減ります。
- 人レコードを作るか:Manage Users や HCM Data Loader で作ると人レコードが作られます。調達エージェントの登録、購買依頼者の BU(主たるアサインメントで決まる)、条件付きのロール・マッピングは人レコードを前提にしています
- 自己サービスのロール:HCM の Employee・Contingent Worker・Line Manager の代わりに、ERP 用の抽象ロール Enterprise Resource Planning Self Service User を使えます。スケジュール済プロセスの管理、経費精算書の作成などが含まれます。手順3の「Employee」マッピングで自動付与するのが基本形です
- ユーザーの供給元:社内の Microsoft Active Directory と同期するなら Bridge for Microsoft Active Directory(AD グループとロールの対応付けが可能)、別の ID 管理製品から配布するなら自動作成を止める、と方式を 1 つに決めます
- SSO:社内 IdP と SAML で連携する場合の考え方は セキュリティ設計 を参照してください
Manage Data Access for Users のスプレッドシートには、ユーザー名・ロール・セキュリティ・コンテキスト・コンテキスト値の 4 つが必要です。設計段階で同じ列の表を作っておくと、そのまま転記できます。
User Name,Role,Security Context,Security Context ValueAP_TANAKA,Accounts Payable Specialist,Business Unit,JP01 営業単位AP_TANAKA,Accounts Payable Specialist,Business Unit,JP02 営業単位GL_SUZUKI,General Accountant,Data Access Set,サンプル商事 JP 元帳INV_SATO,Warehouse Manager,Inventory Organization,JP1 東京倉庫ロール・マッピングも、移行前に表で設計してレビューします。
Mapping Name,Condition,Role,AutoprovisionEmployee,System Person Type=Employee; HR Assignment Status=Active,Enterprise Resource Planning Self Service User,YJP01 AP 担当,Department=経理部; Job=AP 担当,JP AP 担当者(カスタム),Y落とし穴とベストプラクティス
Section titled “落とし穴とベストプラクティス”- 業務ユーザーへのロール付与は、手作業よりロール・マッピングを基本にします。異動時の付け外しが自動になり、監査でもルールで説明できます
- 必要な権限だけを付けます。不要な権限の付与は、サブスクリプションの利用(ライセンス)にも影響します
- Import User and Role Application Security Data は毎日動かします。Security Console の分析画面や監査レポートはこのデータを使います
- データアクセスは「ロール × コンテキスト」の組合せで付与されます。同じユーザーでもロールごとに付与が必要です
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- GL 模擬テスト:データアクセスセット(Full Ledger/Primary Balancing Segment Value、読取専用/読取・書込)、元帳作成時の自動作成、セグメント値セキュリティとの組合せ
- AP 模擬テスト:請求書・支払が BU 単位で保護され、Manage Data Access for Users での明示的な付与が必要なこと
- 調達 模擬テスト:調達エージェント(Manage Procurement Agents)の操作とアクセスレベル、購買依頼者の BU が主たるアサインメントで決まること、Procurement Preparer
- 在庫 模擬テスト:在庫組織などのセキュリティ・コンテキスト
- 覚える用語:4 つのロール種類、集約権限はコピー不可、
ORA_は編集不可、Manage Role Provisioning Rules、Autoprovision Roles for All Users、Manage Data Access for Users、Retrieve Latest LDAP Changes
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”本サイトは学習目的で個人が作成した非公式の教材であり、Oracle Corporation およびその関連会社とは関係ありません。内容の正確性は保証しません。最新の仕様・試験範囲は必ず公式ドキュメントと Oracle University の情報で確認してください。
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