連携方式の全体像と選び方
連携の 4 つのタイプ
Section titled “連携の 4 つのタイプ”公式の Integration Playbook は、連携を次の 4 タイプに分けています。
| タイプ | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| インバウンド | 外部システム → Fusion へデータを入れる | 他システムの請求書を AP に取り込む |
| アウトバウンド | Fusion → 外部システムへデータを出す | 支払結果を銀行・DWH に渡す |
| プロセス連携 | 複数のオブジェクトや外部アプリにまたがる一連の処理を 1 つの業務プロセスとして動かす | 受注 → 出荷指示 → 請求を OIC で順に実行 |
| データマッシュアップ | Fusion の画面に外部データを表示する(UI 拡張) | 画面に外部の与信情報を表示 |
このセクション(連携・API)は、主にインバウンド・アウトバウンド・プロセス連携の「裏側の連携」を扱います。画面の拡張は 拡張の全体像 を参照してください。
連携方式の比較
Section titled “連携方式の比較”| 方式 | 方向 | 同期/非同期 | 向くデータ量 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| REST API | 両方向 | 同期(非同期の処理もあり) | 少量(1 回 500 件まで) | 1 件単位の登録・更新・照会 |
| SOAP Web サービス | 両方向 | 同期・非同期 | 少〜中量 | REST がない機能、ErpIntegrationService |
| FBDI+erpintegrations | インバウンド | 非同期 | 大量 | 移行、定期的な一括取込 |
| BICC(Data Extraction ツール) | アウトバウンド | 非同期(バッチ) | 大量・差分 | DWH・データレイクへの抽出 |
| BI Publisher(BIP) | アウトバウンド | 同期(小量)/スケジュール | 小量 | 帳票、少量のファイル出力 |
| ビジネスイベント | アウトバウンド | 非同期(発行・購読) | 1 件ずつ・少量 | 「登録された」「承認された」の通知 |
| OIC | 両方向 | 両方 | 方式次第 | 上記の組み合わせ・変換・監視 |
同期と非同期
Section titled “同期と非同期”| 観点 | 同期 | 非同期 |
|---|---|---|
| 呼び出し側 | 応答が返るまで待つ | 受付だけ受け取り、結果は後で確認する |
| Fusion での代表 | REST の GET・POST・PATCH | FBDI 取込、ESS ジョブ、BICC 抽出、ビジネスイベント |
| 結果の受け取り | 応答の HTTP ステータスと本文 | ESS 要求 ID で状況を照会する、コールバック・イベントで受け取る |
| 向く処理 | 画面操作に近い 1 件単位の処理 | 件数が多い処理、時間がかかる処理 |
Playbook の判断表では、同期・要求応答型(リクエスト/リプライ)に使えるのは REST と SOAP だけです。FBDI とビジネスイベントは非同期専用です。
各方式の要点
Section titled “各方式の要点”REST API
Section titled “REST API”- 業務オブジェクトを リソース(例:AP 請求書の
invoices)として公開し、GET・POST・PATCH・DELETE で操作します。形式は JSON です。 - リアルタイム連携向けです。大量データの入出力には向きません。調達の Integration Playbook には「1 回の呼び出しで 500 件を超えて返す API はない」と明記されています。
- 詳細は REST API の基本 と REST API 応用 で説明します。
SOAP Web サービス
Section titled “SOAP Web サービス”- XML 形式です。業務オブジェクト・サービス(作成・取得・更新・検索など)と、プロセス・サービスがあります。
- 公式は「同等の REST API があるなら REST を使う」ことを推奨しています。SOAP は既定でページングがなく、大量データではタイムアウトしやすいためです。
- 現在も重要なのは ErpIntegrationService(ファイル取込・ESS ジョブ実行)と BI Publisher のレポート実行です。SOAP Web サービス を参照してください。
FBDI + ERP Integration Service(erpintegrations)
Section titled “FBDI + ERP Integration Service(erpintegrations)”- FBDI は、テンプレートで作った CSV を ZIP にしてアップロードし、ESS ジョブでインターフェース表 → 本テーブルへ取り込む仕組みです。
- 自動化には ERP Integration Service の importBulkData(アップロード・ロード・インポートを 1 回の呼び出しで実行)を使います。REST(
/erpintegrations)と SOAP の両方があり、完了時のコールバックやイベント通知も受け取れます。 - 調達の Playbook には、1 回の取込は 10 万件まで(または同時 5 本まで)、ZIP 全体は 250 MB 以下、ZIP 内の各ファイルは 1 GB 以下という目安が示されています。他モジュールの目安は各ガイドで確認してください。
- 詳細は FBDI と ERP Integration Service を参照してください。
BICC と Data Extraction ツール
Section titled “BICC と Data Extraction ツール”- BICC(BI Cloud Connector)は、オファリング 単位でビュー・オブジェクト(VO)のデータを CSV に抽出し、WebCenter Content(UCM)または OCI Object Storage に出力します。初回の全件抽出と、その後の増分抽出ができます。
- 26D の Integration Playbook では BICC は「レガシー」と位置づけられ、後継として Redwood ベースの Data Extraction ツール が推奨されています。Oracle A-Team のブログ(2026 年 4 月)では、26A から提供され、対象オブジェクトは順次追加中と説明されています。新規案件では、必要なオブジェクトが Data Extraction ツールで抽出できるかを先に確認します。
- どちらもリアルタイム抽出には向きません。詳細は BICC によるデータ抽出 を参照してください。
BI Publisher(BIP)
Section titled “BI Publisher(BIP)”- BIP は帳票ツールです。SQL で作ったデータモデルを、PDF・Excel・CSV などで出力できます。最近の公式ドキュメントでは Oracle Analytics Publisher と表記されています。
- Oracle A-Team は「連携用の大量抽出には推奨しない。少量データ向けの最後の手段」としています。Playbook も、BICC と REST で要件を満たせないときは、BIP レポートを ESS ジョブ(BIPJobType) として登録し、ERP Integration Service の
exportBulkDataなどで出力を受け取る方法を案内しています。 - レポートの作り方は BI Publisher を参照してください。
ビジネスイベント
Section titled “ビジネスイベント”- Fusion で「請求書が作成された」「仕訳が転記された」などが起きたときに、購読者(主に OIC)へ通知する 発行・購読(パブリッシュ/サブスクライブ)型 の連携です。
- 一部のイベントは既定で無効なため、有効化が必要です。イベントの内容は最小限なので、詳細は REST で取り直す設計が基本です。大量データの連携には使いません。
- ビジネスイベントとアウトバウンド連携 を参照してください。
OIC(Oracle Integration)
Section titled “OIC(Oracle Integration)”- ERP Cloud アダプタを使うと、REST リソースの呼び出し、FBDI 取込(コールバック付き)、ビジネスイベントの購読を、画面の設定で組み立てられます。
- 項目変換(マッピング)、スケジュール実行、障害時の再実行、監視もまとめて扱えます。OIC の概要 を参照してください。
ファイル連携とその他の手段
Section titled “ファイル連携とその他の手段”- Fusion 側のファイルの置き場は WebCenter Content(UCM) です。FBDI の ZIP や BICC・ESS の出力はここを経由します。外部の SFTP とのやり取りは OIC などで行います。
- このほか、B2B メッセージ用の Collaboration Messaging、設定データの環境間移行に使う機能設定マネージャ(FSM)があります。FSM は取引データの連携手段ではありません(FSM を参照)。
連携方式の選び方(判断の手順)
Section titled “連携方式の選び方(判断の手順)”次の順に決めると、方式がほぼ絞り込めます。
- 方向を決める:インバウンドか、アウトバウンドか。インバウンドなら REST・SOAP・FBDI が候補です。アウトバウンドなら REST・BICC(Data Extraction ツール)・BIP・ビジネスイベントが候補です。
- データ量を見積もる:平常時とピーク時(月末・年度末・移行時)の件数を出します。1 回に数百件を超えるなら、REST の繰り返しより FBDI や BICC を検討します。
- リアルタイム性を決める:「即時」「数分以内」「日次」のどれが必要かを業務側と合意します。即時の参照・登録は REST、数分以内の通知はビジネスイベント、日次以下はバッチ(FBDI・BICC)が基本です。
- エラー処理を決める:1 件ずつ成否を返したいなら REST、まとめて取り込んでエラー行だけ修正・再取込するなら FBDI が向きます。FBDI はインターフェース表にエラーが残るため、エラーの確認と再処理の手順が必要です。
- 実行基盤を決める:スケジュール、変換、再実行、監視を OIC で行うか、外部のジョブ管理基盤から直接 API を呼ぶかを決めます。
- API の有無を確認する:使う REST リソース・SOAP サービス・FBDI テンプレート・BICC オファリングが、対象リリースで提供されているかを公式ドキュメントで確認します。公開されていない(ドキュメントにない)API は使いません。
代表的な連携パターン
Section titled “代表的な連携パターン”パターン 1:マスタ連携(仕入先・顧客・品目など)
Section titled “パターン 1:マスタ連携(仕入先・顧客・品目など)”| 場面 | 推奨する方式 | 補足 |
|---|---|---|
| 初期移行 | FBDI(大量) | 作成順序(依存関係)に注意(移行設計) |
| 外部 → Fusion の日々の差分 | REST(少量・即時)、FBDI(大量・日次) | 外部側の変更日時で差分を作る |
| Fusion → 外部への配信 | ビジネスイベント+REST、または BICC の増分抽出 | イベントは「変わった」という通知、内容は REST で取得 |
マスタの持ち主(どのシステムが正か)を決めないと、双方向の更新が衝突します。共通マスタデータの設計 もあわせて確認してください。
パターン 2:トランザクション取込(AP 請求書・仕訳・AR 取引)
Section titled “パターン 2:トランザクション取込(AP 請求書・仕訳・AR 取引)”- 外部システムがデータを出力する(CSV など)
- OIC などが FBDI 形式の CSV に変換し、ZIP にする
importBulkDataでアップロードと取込ジョブを一度に実行する- コールバック(またはイベント)で完了を受け取り、ESS 要求 ID でログ・エラーを取得する
- エラー行を修正して再取込する。インターフェース表は定期的に削除(パージ)する
1 日数件で即時性が必要なら、REST(例:invoices への POST)で 1 件ずつ登録する方法もあります。
パターン 3:残高・明細の抽出(GL 残高、仕訳明細、AP/AR 明細)
Section titled “パターン 3:残高・明細の抽出(GL 残高、仕訳明細、AP/AR 明細)”- 大量・定期(DWH 連携など):BICC の増分抽出、または Data Extraction ツール
- 少量・帳票形式で必要:BIP のスケジュール出力(ESS ジョブ化して erpintegrations で取得)
- 都度・少量の照会:REST の GET(
fieldsとqで必要な項目・行だけ取る)
OTBI は分析用のツールで、データ抽出や連携の手段にはしません(A-Team は、OTBI の Excel 出力が 25,000 件までであることも挙げています)。
インターフェース設計書の項目例
Section titled “インターフェース設計書の項目例”連携 1 本ごとに、次の項目を設計書(IF 定義書)に書いておくと、実装とテストの抜けを防げます。
| 区分 | 項目 | 記入例 |
|---|---|---|
| 基本 | IF ID・IF 名・方向 | IF-AP-001/仕入先請求書取込/インバウンド |
| 基本 | 連携元・連携先・方式 | 購買システム → Fusion AP/FBDI+importBulkData |
| タイミング | 起動契機・頻度・時刻 | 日次 21:00、月末は 2 回 |
| データ量 | 平常・ピーク件数、ファイルサイズ | 平常 2,000 件/月末 15,000 件 |
| 対象 | REST リソース・FBDI テンプレート・ジョブ名 | AP 請求書の FBDI テンプレート/APXIIMPT |
| 項目 | 項目対応(マッピング)、コード変換 | 仕入先コード → SupplierNumber(変換表あり) |
| 認証 | 認証方式・統合ユーザー・必要ロール | OAuth(JWT ユーザー・アサーション)/INT_AP_USER |
| エラー | 業務エラー・システムエラーの扱い、通知先 | エラー行は翌朝に業務担当へメール |
| 再処理 | 再送・再実行の手順、冪等性キー | 請求書番号+仕入先で重複を判定 |
| 順序 | 順序保証の要否、依存する IF | 仕入先マスタ連携の後に実行 |
| 運用 | 監視方法、ログ保管期間、パージ | OIC の監視、インターフェース表は月次パージ |
| 非機能 | 文字コード、ファイル命名規則、SLA | UTF-8、AP_INV_YYYYMMDD_連番.zip、翌営業日 9:00 まで |
設計書を Git で管理する場合は、IF 定義を YAML などの構造化データで持つと、一覧化や差分レビューがしやすくなります(以下はすべて架空の例です)。
id: IF-AP-001name: 仕入先請求書取込direction: inboundsource: 購買システム(サンプル商事株式会社)target: Oracle Fusion Cloud ERP(Payables)method: FBDI + erpintegrations(importBulkData)schedule: normal: "毎日 21:00" month_end: "月末営業日 18:00 に追加実行"volume: normal: 2000 peak: 15000objects: fbdi_template: "AP 請求書の FBDI テンプレート(名称は FBDI ガイドで確認)" ess_job: "oracle/apps/ess/financials/payables/invoices/transactions,APXIIMPT"auth: method: OAuth2 (JWT user assertion) integration_user: INT_AP_USERerror_handling: business_error: "インターフェース表のエラー行を抽出し、業務担当へ通知" system_error: "指数バックオフで 3 回まで再試行し、失敗したら運用担当へ通知"idempotency_key: [SupplierNumber, InvoiceNumber]depends_on: [IF-MD-010] # 仕入先マスタ連携の後に実行落とし穴とベストプラクティス
Section titled “落とし穴とベストプラクティス”- 四半期アップデートの影響を確認する:FBDI テンプレートや REST の属性はリリースで変わることがあります。アップデート前のテスト環境で、連携の回帰テストを行います(環境管理)。
- 統合ユーザーを用途別に分ける:ERP Cloud アダプタのガイドも、用途(GL 用、プロジェクト用など)ごとに統合ユーザーと接続を分ける構成を例示しています。権限を最小にでき、障害の切り分けも容易になります。詳しくは 認証・認可 を参照してください。
- 照合(リコンサイル)を設計に入れる:連携元と連携先の件数・金額を突き合わせる仕組みを、最初から設計します。
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- 対応する試験:OIC 模擬テスト(ERP Cloud アダプタでの FBDI 取込・イベント購読・REST 呼び出しの使い分け)。業務モジュールの試験(AP 模擬テスト など)でも、データの取込手段(FBDI・REST・スプレッドシート)の違いが問われます。
- 覚えるポイント
- 発行・購読型はビジネスイベントだけ。要求応答型は REST と SOAP。
- FBDI は非同期・大量向け。1 回限りの移行で推奨される。
- 大量抽出は BICC(26D 時点ではレガシー扱いで、後継は Data Extraction ツール)。BIP・OTBI は帳票・分析用。
- FBDI の自動化は ERP Integration Service の
importBulkData。
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”- Integration Playbooks for Procurement(26D):Overview of Procurement Integration Options
- Which Integration Option Should You Choose?(26D)
- Integration Types(26D)
- Business Intelligence Cloud Connector(Playbook 26D)
- Data Extraction Tool(Playbook 26D)
- Data Extraction Options and Guidelines for Oracle Fusion Applications Suite(Oracle A-Team)
- Oracle ERP Cloud Adapter Capabilities
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