拡張の全体像(構成・パーソナライズ・拡張・PaaS)
Fusion で「標準と違うことをしたい」ときの手段は、次の5つに分けられます。上にあるものほど標準に近く、アップデートの影響を受けにくくなります。
| 手段 | 誰が・どの範囲に | 代表的なツール | 例(架空:サンプル商事) |
|---|---|---|---|
| 構成(Configuration) | 導入担当がサイト全体に設定 | 設定および保守(Setup and Maintenance)の設定タスク | 付加フレックスフィールド(DFF)のセグメント定義、参照タイプ、承認ルール |
| パーソナライズ(Personalization) | エンドユーザーが自分だけに | 各画面の表示設定 | 列幅の変更、検索条件の保存 |
| 拡張(Extension) | 管理者・開発者が設計時にサイト全体へ | VBS(Redwood ページ)、Page Composer・Structure・Application Composer(従来型ページ) | JP01 営業単位の取引だけ DFF を必須にする |
| 連携(Integration) | 開発者 | REST・SOAP API、FBDI、ビジネスイベント、Oracle Integration(OIC) | 外部の経費システムから請求書を取り込む |
| PaaS(独自アプリ) | 開発者 | Visual Builder(Web アプリ)、APEX、OCI | 取引先向けポータル、独自 DB を持つ申請アプリ |
構成と拡張の境目は、Oracle の Redwood 拡張ガイドの例がわかりやすいです。DFF を設定タスクで有効にするのは「構成」、その DFF を特定の画面で特定の国のときだけ表示するのは VBS による「アプリケーション拡張」です。パーソナライズは実行時にエンドユーザー本人だけに効く変更で、拡張は設計時にサイト全体へ効く変更です。
ページの種類で使うツールが変わる
Section titled “ページの種類で使うツールが変わる”26C 時点の Fusion には、Redwood ページと従来型ページ(Redwood 以前の ADF ベースの画面)が混在しています。どちらのページかで、使える拡張ツールが変わります。
| ページ | 見分け方 | 画面の拡張 | 項目の追加 |
|---|---|---|---|
| Redwood ページ | ユーザー名のメニュー(Settings and Actions)に Edit Page in Visual Builder Studio が出る | VBS(Express モード/Advanced モード) | DFF(設定タスク)を定義し、VBS のルールで表示・必須を制御 |
| 従来型ページ | 上記のリンクが出ず、サンドボックス内で Page Composer が使える | Page Composer、Structure(ナビゲータ)、User Interface Text | DFF、Application Composer(主に CX) |
VBS の公式ドキュメントは「ページを開いて Edit Page in Visual Builder Studio が見えたら、Fusion 側のツールではなく VBS で UI を変更する合図」と説明しています。リンクが出ない理由は、Redwood 未対応のページであることのほかに、VBS へのアクセス権限がない、その環境に VBS インスタンスが紐付いていない、という場合もあります。
データモデルと UI を分けて考える
Section titled “データモデルと UI を分けて考える”拡張の設計では「何を足すか」を3層に分けると整理しやすくなります。
- データ(項目・オブジェクト):ERP・SCM ではフレックスフィールド(DFF・EFF)が基本です。CX では Application Composer でカスタム項目・カスタム・オブジェクトを作ります。
- 画面(表示・必須・既定値・入力チェック):Redwood ページでは VBS のビジネス・ルールやルール・セットで制御します。
- 外部とのデータの受け渡し:REST API、FBDI、ビジネスイベント、OIC を使います。
VBS のドキュメントは、データモデルの変更(Application Composer など)を先に済ませてから、VBS で画面に出す順序を推奨しています。
設定・実装の手順(手段の選び方)
Section titled “設定・実装の手順(手段の選び方)”要件ごとに、次の順番で手段を決めます。
- 標準機能・設定で実現できないか確認する(Fit to Standard)。設定で済むものを拡張にしません。考え方は 標準機能とアドオンの考え方 を参照してください。
- 本人だけの好みならパーソナライズに任せます。全員に強制する必要がなければ拡張は作りません。
- 画面の表示・必須・読取専用・既定値・入力チェックは、Redwood ページなら VBS のビジネス・ルール(Express モード)で実現します。従来型ページなら Page Composer です。
- 項目を増やすときは、DFF を設定タスクで定義・デプロイし、Redwood ページではビジネス・ルールで表示と必須を制御します(フレックスフィールドと値セット)。
- 用語・ラベルの一括変更は User Interface Text ツールで行います。
- 新しい画面(Fusion のデータを Fusion のユーザーが使う)は、VBS で App UI を作ります。Fusion と同じ見た目・同じ認証で動きます。
- Fusion の外で動く画面(外部ユーザー、独自 DB、独自デザイン)は Visual Builder の Web アプリ、APEX、OCI で作ります。
- データの受け渡しは 連携方式の全体像、帳票・分析は レポーティングツールの全体像 の範囲です。
PaaS の選び方
Section titled “PaaS の選び方”画面を新しく作る場合の選択肢を比べます。
| 選択肢 | 向いている要件 | Fusion との関係 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| VBS の App UI | Fusion ユーザー向けの新画面、Fusion データの参照・更新 | Fusion 上で動き、他の Redwood アプリと同じ見た目になる | 独自のビジネス・オブジェクト(DB)は持てない。Fusion の外では動かない |
| Visual Builder の Web アプリ | 外部ユーザー、独自のビジネス・オブジェクト、高度な認証方式の REST、独自デザイン | サービス・カタログ経由で Fusion のデータを利用でき、Fusion に埋め込むこともできる | Visual Builder の実行環境を別に運用する |
| APEX | SQL 中心の業務アプリ、独自テーブルでの集計・帳票 | REST データ・ソースとして Fusion の REST API を呼ぶ | Fusion の DB は直接参照できない(REST や抽出データ経由) |
| OCI(Functions、Autonomous Database など) | 重い計算、独自 API、データ基盤 | REST・イベント・BICC 抽出で連携 | 画面は別途必要。運用設計の負荷が大きい |
| OIC | システム間連携(画面なし) | ERP Cloud アダプタ、ビジネスイベント | 画面開発の手段ではない |
VBS の公式ドキュメントは、App UI では足りない典型として「高度な認証方式の REST への接続」「自前の DB でのカスタム・ビジネス・オブジェクト」「Oracle Cloud Applications の外での実行」「Fusion の資格情報を持たないユーザーへの提供」「独自のルック・アンド・フィール」を挙げ、これらはレスポンシブ(Web)アプリで作るよう案内しています。
SaaS 拡張の原則
Section titled “SaaS 拡張の原則”四半期アップデートに耐える
Section titled “四半期アップデートに耐える”- Fusion は四半期ごと(26A〜26D)に更新されます。通常はテスト環境が先に、本番が後に更新されます(VBS のドキュメントでは、ポッドの更新はおおむね2週間以内の差)。
- アップデート後も残るのは、Oracle が用意した拡張ポイントを使った変更です。VBS では Designer 上で「拡張可能な領域」として示された部分しか変更できず、ページの中身を直接書き換えることはできません。この制約が拡張を守っています。
- 製品ごとの拡張ガイドに書かれた範囲に留めます。たとえば Redwood 版のセルフサービス調達(25B)の新機能説明では、ガイドに載っていない変更は将来の更新と互換性がなく、ページが正しく表示されなくなるおそれがあると注意しています。
- 開発環境と配布先のリリースを揃えます。新リリースに上がったテスト環境で作った拡張を、旧リリースのままの本番へデプロイしてはいけません。本番の更新を待ってからデプロイします。
- 拡張の実行時依存(Unified Application のバージョンと Oracle JET のバージョン)も定期的に更新します。VBS は更新を促すポップアップを表示します。
サポート範囲と責任分担
Section titled “サポート範囲と責任分担”- Oracle が提供するのは標準機能と拡張の仕組み(ツール)です。作った拡張の中身(ルールの条件、JavaScript、独自の App UI)は導入側の成果物として、設計書・ソース管理・テストを含めて管理します。契約上のサポート範囲はサポート契約と Oracle のポリシーで確認してください。
- 障害の切り分けでは、拡張を外した状態で再現するかを確かめます。VBS のビジネス・ルールは個別に非アクティブにでき、デプロイ済みの拡張は削除すると元の状態に戻ります。
セキュリティは拡張で作らない
Section titled “セキュリティは拡張で作らない”項目を画面で隠しても、データへのアクセス権は変わりません。VBS のドキュメントも「サービス接続はデータへのアクセスを提供するが、データ・セキュリティは課さない」と明記しています。見せてはいけないデータは、ロールとデータ・アクセスで制御します(セキュリティの基本)。
拡張は「数が増えるほど、アップデート時の確認が重くなる」ため、一覧で管理します。次は拡張一覧(RICEW の E)の例です。
ID,対象画面,要件,手段,拡張ポイント,アップデート時の確認EXT-001,購買依頼(Redwood),JP01営業単位のとき検収担当(DFF)を必須,VBS Express,フォーム・ルール(Required),ルールの評価結果と項目の有無EXT-002,ショッピング・カート(Redwood),Distribute Project Costs アクションを一般ユーザーに表示しない,VBS Express,ビジネス・ルール,アクションの表示・非表示EXT-003,請求書の照会(従来型),社内用語に合わせて項目ラベルを変更,User Interface Text,テキストの置換,ラベルの表示EXT-004,取引先ポータル(新規),取引先が自社の請求状況を確認,Visual Builder Web アプリ,Fusion REST API,API の互換性と認証手段を選ぶときの流れは、次のように整理できます。
要件 ├─ 設定タスクで実現できる? ─────────── はい → 構成 ├─ その人だけの好み? ───────────────── はい → パーソナライズ ├─ 既存画面の表示・必須・既定値・検証? │ ├─ Redwood ページ ───────────────→ VBS(ビジネス・ルール/ルール・セット) │ └─ 従来型ページ ─────────────────→ Page Composer(サンドボックス内) ├─ 項目が足りない? ─────────────────→ DFF(ERP/SCM)/Application Composer(主に CX) ├─ Fusion ユーザー向けの新画面? ──────→ VBS の App UI ├─ Fusion の外・外部ユーザー・独自 DB? ─→ Visual Builder Web アプリ/APEX/OCI └─ システム間のデータ連携? ────────────→ REST・FBDI・OIC落とし穴とベストプラクティス
Section titled “落とし穴とベストプラクティス”- 「設定 → パーソナライズ → 拡張 → PaaS」の順で検討し、検討結果(なぜ拡張が必要か)を記録します。
- 拡張は一覧で管理し、四半期アップデートのたびに回帰テストの対象にします(環境管理・四半期アップデート・テスト)。
- 画面側の入力チェックは利便性のためと割り切り、必須の業務ルールは承認ルールや設定など、画面以外でも守られる仕組みを優先します。
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- 対応する試験:Redwood 模擬テスト の「Redwood エクスペリエンス(The Redwood Experience)」「VBS による Fusion Cloud 拡張の構成(Configuring Oracle Fusion Cloud Extensions with Visual Builder Studio)」
- Edit Page in Visual Builder Studio が出るページは VBS で拡張する。出ない理由(Redwood 未対応、権限不足、VBS インスタンスなし)も問われます。
- 構成(設定タスク)・パーソナライズ(本人だけ・実行時)・拡張(サイト全体・設計時)の違い。
- データモデルの変更(Application Composer・フレックスフィールド)が先、VBS で画面に出すのが後。
- App UI と Web アプリの使い分け(外部ユーザー、独自 DB、Fusion の外での実行は Web アプリ)。
- Oracle 自身も VBS と Oracle JET で Redwood アプリを作っているため、顧客の拡張も同じ道具で作れる、という Redwood プラットフォームの考え方。
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”- Extending Oracle Cloud Applications with Visual Builder Studio
- Which Tool Do I Use to Customize My Oracle Cloud Application?
- What Can You Do with Oracle Visual Builder Studio?
- Extending Redwood Applications for HCM and SCM Using Visual Builder Studio
- Configuring and Extending Applications(Oracle Fusion Cloud Applications)
- Self Service Procurement 25B:Use Extensibility Capabilities
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