Narrative Reporting:レポート・パッケージと管理レポート
モジュールの役割と位置づけ
Section titled “モジュールの役割と位置づけ”Narrative Reporting は、経営報告や開示資料のように「数値」と「説明文」を組み合わせた文書を、組織で作り上げるサービスです。R2R の最後にあたり、FCC の連結結果や Planning の予実を、読み手に届く形にします。
| 役割 | 内容 | 主な機能 |
|---|---|---|
| 開示資料・報告書の共同作成 | 章ごとに担当者を決め、レビューと承認を経て 1 つの文書にまとめる | Report Package、doclet、Author・Review・Sign Off |
| 管理レポート | 数値の表とグラフを作り、PDF・Excel・HTML で出力し、まとめて配る | Reports(Management Reporting)、Books、Bursting |
| 保管と統制 | 成果物の保管、アクセス権、監査、環境間の移行 | Library、ロール、Audit |
Fusion GL の 財務レポート や OTBI・BIP は、ERP のデータを帳票や分析として出すツールです。Narrative Reporting は、EPM の連結・計画データや ERP の数値に説明文を加え、分担・レビュー・承認のワークフローで文書を完成させる点が違います(EPM Cloud の全体像)。
アプリケーション構造(レポート・パッケージ・Reports・Library)
Section titled “アプリケーション構造(レポート・パッケージ・Reports・Library)”EPM は Fusion の組織(法的エンティティ・BU・元帳)ではなく、環境に作るビジネス・プロセスと、その中の成果物(artifact)で構造を表します。成果物は Library に置き、数値は Connections で接続したデータソースから取ります。
レポート・パッケージの構成要素
Section titled “レポート・パッケージの構成要素”| 構成要素 | 内容 | レビュー・サインオフ |
|---|---|---|
| doclet(ドックレット) | レポートを分けた部品。作成者(author)を割り当て、承認者(approver)も置ける | 対象 |
| Section | doclet のグループ。reviewer を割り当てると、その Section の doclet だけが見える | — |
| Supplemental doclet | 手順書や参考資料などのファイル。作成のワークフローは doclet と同じだが、内容はパッケージに統合されない | 対象外 |
| Reference doclet | Excel の名前付き範囲や、Reports から作ったグラフを置く入れ物。通常の doclet から参照し、出力には参照先に埋め込んだ内容が出る | 対象外(Author のみ参加) |
- 種類:Word・PowerPoint・PDF から選びます。Word・PowerPoint はスタイル見本(style sample。DOCX/PPTX)で見た目をそろえ(PowerPoint はスライドサイズも見本に合わせる)、PDF はヘッダー・フッター・余白を指定します。
- 変数:Static(パッケージ内で管理)、Reference(Word や Excel の内容から値を取る。PowerPoint や図形からは取れない)、Shared(複数パッケージで共有する静的な値。Web で作成)があります。
- 埋め込みコンテンツ:Word では Excel の表と Reports の Grid が表に、グラフが画像になります。PowerPoint では画像で入ります。
開発フェーズとロール
Section titled “開発フェーズとロール”準備(構造・担当・期間を設定) → Author:doclet を check out → 編集 → check in → submit(承認を設定した doclet は approve/reject) → Review:レビュー・サイクルごとにコメントと返信、修正 → Sign Off:signer が承認または却下。内容をロック → 公開(publish)フェーズはどれも必須ではありません。複数の作成者で分担するなら Author、外部向け・数値が多い報告書なら Review、最終版を承認して変更を止めたいなら Sign Off が向きます。
| フェーズ | 進め方のポイント |
|---|---|
| Author | Owner が開始すると作成者に通知が届く。doclet は 1 人ずつ check out し、check in のたびに旧バージョンが残る(保持数は作成時に設定。自動 check in は新バージョンを作らない)。すべての doclet が完了ステータスになると自動で完了し、Owner が手動で完了させると未完了の doclet も完了扱いになる |
| Review | 複数のレビュー・サイクルを設定できる。範囲は全体・Section・doclet。コメントはスレッドで返信でき、サイクルをまたいで残る |
| Sign Off | 内容をロックし、signer が承認または却下する。却下されたら Owner がロックを解除して修正し、承認されたら公開に進む |
| ロール | 単位 | できること |
|---|---|---|
| Owner | パッケージ | 構造・プロパティの変更、フェーズの実行、ユーザーの割り当て(作成者が自動で Owner) |
| Author | doclet | doclet の内容を作る(Smart View で check out/check in。Web 画面でも可) |
| Approver | doclet | doclet を approve/reject する(承認を有効にした場合) |
| Reviewer | 全体・Section・doclet | レビューでコメントする(範囲はレビュー・サイクルで設定) |
| Signer | パッケージ | 最終承認(sign off)。Sign Off を有効にするなら 1 人以上が必要(最大 50 名) |
| Viewer | 全体または一部 | 閲覧のみ |
Reports・Books・Bursting
Section titled “Reports・Books・Bursting”- Reports:Grid・Chart・Image・Textbox を置いて作ります。POV は、全体の Global POV(選択は同じデータソースのレポートで保存される)と、Grid・Chart ごとの Local POV(選択はそのレポートのセッション中だけ有効)があります。Prompt は Global POV や Grid の行・列に設定でき、実行時にメンバーを選ばせられます。HTML・PDF・Excel で開け、プレビュー中のレポートは Snapshot Report として保存できます。部品の共有は Shared Report Objects(Narrative Reporting のみ)です。Oracle Analytics Cloud のダッシュボードは Analytics Image として挿入できます(Enterprise サブスクリプション)。
- データソース:Narrative Reporting では Connections で接続を作って指定します。Cloud EPM では、そのインスタンスのキューブから自動で作られ、他のインスタンスは指定できません。
- Books:Reports・Books・Word/PDF の文書を、1 つの PDF または Excel にまとめます。目次は Word 文書の目次定義で作り、Section で POV を引き継ぎます。Excel 出力に入るのは Reports だけです。
- Bursting:1 つのデータソースの 1 つのディメンションについて、複数メンバーぶんのレポート/ブックを実行し、メンバーごとに PDF または Excel を出します。スケジュールは Job Console で行います。
- Notes と AI:Notes は POV ごとの説明文です(Textbox は Notes 関数、Grid は GridNotes 関数)。ガイドには、Generative AI による説明文の生成と Notes の要約、Library の検索・Grid への質問・Grid の要因の分析ができる Reporting Agent の記述があります。利用条件は公式で確認してください。
Library・Connections・Application
Section titled “Library・Connections・Application”- Library:成果物(report package、Reports、Books、Bursting Definition、Application、Data Source、フォント、監査ファイル、Office・PDF)を置きます。権限は Inspect 画面の Access タブで Administrative・Write・View を付け、親フォルダから継承できます。
- Connections:Reports のデータソースは、Cloud EPM(Planning と Planning Modules、FreeForm、FCC、Tax Reporting、Enterprise Profitability and Cost Management)、PCM、Essbase、Fusion ERP です。作成は Service Administrator だけで、接続したユーザー ID がデータソースに渡るため、キューブ側のセキュリティが効きます。Cloud EPM への接続で Remote Library を有効にすると、Cloud EPM のレポートを見たりコピーしたりできます(ネイティブ認証のみ。SSO は不可)。Fusion ERP への接続では、データソース側の管理者に BI Administrator ロールが必要です。
- Application:数値を Narrative Reporting 内に持つ仕組みです。1 環境に 1 つ、Model は最大 5 つで、Account と Time のディメンションが必須です。メンバーはファイル(.txt・.csv)でロードでき、必須の列は Name と Parent です。変更は Deploy で反映します。ガイドの注記では、2019 年 6 月以降の新規の Standard・Enterprise ライセンスの顧客には提供されず、新しいカスタム・キューブは FreeForm を使います。
主要な業務プロセス
Section titled “主要な業務プロセス”決算開示資料を、前期のパッケージを再利用して作る流れです。
- 準備:前期のレポート・パッケージを Library でコピーし、章立て(doclet・Section)、Reference doclet、変数、スタイル見本を見直します。
- 担当と期間:Owner・Reviewer・Signer・Viewer と、doclet ごとの Author・Approver を割り当て、フェーズごとに開始日と終了日を決めます。
- 数値の確定待ち:GL を締め、FCC の連結や Planning の予実が確定してから Author を始めます。
- Author:Smart View for Office などで doclet を書き、Reports のグラフや表を埋め込みます。
- Review:レビュー・サイクルを回してコメントを反映します。数値が変わったら埋め込みを更新し、再レビューの範囲を決めます。
- Sign Off と公開:signer が承認し、公開します。公開前のプレビュー(全体・Section・doclet の単位。Word・PowerPoint・PDF でダウンロード可)でレイアウトを確認します。
- 配布と整理:公開した内容は Distribution で閲覧者に渡します(手順は公式で確認)。完了後は Delete Working Papers で、不要なレビュー・インスタンスや旧バージョンを整理します。
日本企業の四半期の例です(架空)。営業日 3 に連結が確定、4 に Author を開始、6 に Review 1 回目、8 に Review 2 回目、9 に Sign Off、10 に公開して決算説明資料と決算短信の素材にします。
マスタデータ
Section titled “マスタデータ”Narrative Reporting には、取引先や品目のようなマスタはありません。次の「設定と部品」を用意します。
| マスタ・部品 | 内容 | 作成場所・UI | 移行手段 |
|---|---|---|---|
| ユーザー・ロール | Service Administrator などのロール | Identity Domain の管理者が作成・付与 | 環境ごとに設定 |
| Connections | データソースへの接続(Service Administrator のみ) | Library | Export は資格情報を含まず、Import 後に再入力 |
| 成果物とアクセス権 | フォルダ、Reports、Books、Bursting、Report Package | Library、ホームのカード、Report Center | Export/Import(ZIP)、EPM Automate |
| 共通部品 | フォント、Shared Variable List、Notes のテンプレート | Library の Fonts、Web、Notes Manager | Export/Import、Notes Manager |
作成順序:環境とビジネス・プロセス → ユーザー・ロール → Connections → フォルダと権限 → フォント・共有変数 → Reports → Books・Bursting → Report Package → 担当・フェーズ。Reports は接続が前提で、Report Package は埋め込む Reports が先です。
他モジュールとの連携
Section titled “他モジュールとの連携”| 連携 | タイミング | データ | 手段 |
|---|---|---|---|
| FCC・Planning → Narrative Reporting | 連結・予算の確定後 | 連結数値、予算・予測・予実 | Connections(Cloud EPM)で接続し、Reports・Smart View で参照 |
| Fusion GL → Narrative Reporting | GL クローズ後 | 残高 | Connections の Fusion ERP(対象データは公式で確認)。連結後の数値は FCC を接続先にする |
| Cloud EPM のレポート | 随時 | レポートの定義 | Remote Library で閲覧・コピー |
| Smart View for Office | 作成・レビュー・分析のとき | doclet、Reports(Download as Excel)、Application のデータ | Excel・Word・PowerPoint に Smart View を接続し、check out・編集・check in、レビューと承認、データ更新を行う(導入手順は公式で確認) |
| 外部の XBRL サービス | 提出前 | パッケージの内容 | 設定(Settings)で XBRL サービス連携を有効にして送る |
Narrative Reporting は数値を参照して報告するサービスで、GL への仕訳の書き戻しは FCC・Planning 側の役割です(EPM データ統合)。Fusion 側の締めは 期間締め、全体の流れは R2R を参照してください。
標準機能とアドオン
Section titled “標準機能とアドオン”| 要件 | 標準でできること | 足りないとき |
|---|---|---|
| 分担作成・レビュー・承認 | Report Package(3 フェーズ、通知、バージョン管理、履歴) | 社外とのやり取りや法定の署名・押印は運用で補う |
| 数値の表示・配布 | Reports、Books、Bursting | 明細レベルの帳票は OTBI・BIP(レポーティングの全体像) |
| 説明文の支援 | Notes、Generative AI、Reporting Agent | 利用条件は公式で確認 |
| XBRL・自動化 | XBRL サービス連携(データシートでは Ez-XBRL、別サブスクリプション)、Job Console、EPM Automate | 日本の制度提出は専用ツールを検討。全社のジョブ管理製品から EPM Automate を呼ぶ |
Fit to Standard では、まず標準の report package の構造とフェーズで足りるかを確認します。Narrative Reporting の外で文書を作る前に、doclet の分け方、Reference doclet、Reports で実現できないかを検討します(標準機能とアドオンの考え方)。
ベストプラクティス
Section titled “ベストプラクティス”- doclet は、作成者・レビュー担当・提出時期のいずれかの単位で分けます。check out 中は他の人が編集できないため、1 つの doclet に全章を入れると分担できません。公式の推奨は、doclet の総数を 100 未満、Section の階層を 3〜5 レベルに抑えることです。
- フェーズは必要なものだけ有効にします。Sign Off を使うなら Signer を最初に決めます。
- 数値は手で打たず、Reports や Reference doclet から埋め込み、変数で本文に差し込みます。EPM Cloud のデータには、Excel より Reports を使います。
- スタイル見本は代表的なページだけの小さなファイルにします。フォントは doclet に埋め込まず、サービスにアップロードします。doclet の旧バージョンの保持数は、既定のままにして大きくしすぎません。
- 権限は個人ではなくグループに付け、Library は期・用途別のフォルダに分けて親から継承させます。
- 開発環境の成果物は Export/Import で本番へ移し、Connections の資格情報を再入力します。公開前のプレビューでは、ブラウザー表示が PDF 描画のため、Word・PowerPoint とフォントの見え方が違うことがあります。
- 日次のバックアップ・スナップショットのほか、期末の前に保存用のスナップショットを取り、変更履歴は Audit の抽出で追えるようにします。
- アンチパターン:数値の手修正、Library の権限を個人ごとに付ける、環境の更新直後に本番で初めて確認する。
日本での導入の考慮点
Section titled “日本での導入の考慮点”次は、一般論と、公式で確認できた範囲の整理です。
- 開示資料との関係:決算短信(取引所への適時開示)、有価証券報告書(金融商品取引法)、事業報告・計算書類(会社法)、決算説明資料、取締役会資料などを作る工程で、Narrative Reporting は分担作成・レビュー・承認と数値の埋め込みを担います。制度上の提出そのものを置き換える機能ではありません。
- XBRL:公式のデータシートは、XBRL・iXBRL を Ez-XBRL によるもの(別途サブスクリプション)と書いています。日本の提出(EDINET・TDnet)向けのタクソノミ対応は確認できていません。
- 承認と内部統制:Sign Off は社内の承認記録として使えます。法的な署名・押印の代わりになるかは、法務・監査人と確認します。check out のロック、バージョン管理、履歴、監査の抽出はありますが、J-SOX への適合を公式が示した記述は確認できていません。
- 単位と年度:円・千円・百万円の表示と、元データの保持単位を分けて設計します。4 月始まりの年度と期間メンバーの対応は、データソース(FCC・Planning)側で先に決めます。
- 日本語:画面の言語は Preferences で選べます。サンプルは英語のみです。日本語の出力に使うフォントは Library の Fonts に追加できるため、早めにテストします。日本向けテンプレートの有無は確認できていません。
実装リファレンス
Section titled “実装リファレンス”| 区分 | 名称 | 備考 |
|---|---|---|
| ホームのカード | Tasks、Messages、Report Packages、Books、Bursting Definitions、Jobs、Reports、Notes、Library、Tools、Academy | ロールで見える範囲が変わる |
| ロール | Service Administrator、Application Administrator、Library Administrator | Service Administrator は全機能と Connections の作成・保守(他ユーザーの My Library は見えるが、Favorites と Recent は不可)。Application Administrator は Application・Model・Dimension・データグラントの作成と保守。Library Administrator はフォルダを作れるが、中身を開くには個別の権限が必要。ほかに閲覧・レビュー中心のロールがある(一覧は公式の Roles and Permission-Based Access) |
| セキュリティの 3 レベル | システム、成果物(Artifact)、データ(Data Grants) | Library の権限は Administrative・Write・View |
| 管理 | Job Console、Service Activity Report、System Audit・Artifact Audit、Daily Maintenance、Backup Snapshot・Restore、Clone | 監査の結果は Audit Logs フォルダ |
EPM Automate のコマンド名や REST API は、リリースにより異なるため公式ドキュメントで確認してください。
試験対策ポイント
Section titled “試験対策ポイント”- 対応試験:Oracle Narrative Reporting 2026 Implementation Professional(1Z0-1083-26)。Narrative 模擬テスト で演習できます。
- 形式:オラクル日本の認定試験一覧に 2026 年版の行は確認できず、2025 年版(1Z0-1083-25-JPN)が 50 問・90 分・合格 68% です(2026/10/30 配信終了の注記つき)。公式の出題範囲は未確認で、模擬テストの分野はこのサイトの整理です。
- 覚えること:構成要素(Supplemental・Reference doclet の扱い)、3 フェーズの進め方と完了条件、ロールの単位、変数の種類、Reports の部品と POV・Prompt、Books と Bursting の違い、Library の権限、Connections と Remote Library、Application の制約。
公式ドキュメント
Section titled “公式ドキュメント”- Learning About Narrative Reporting(PDF)
- Administering Narrative Reporting(PDF)
- Creating and Managing Report Packages for Narrative Reporting(PDF)
- About the Author Phase Process
- Working with Reports(PDF)
- Working with Applications, Models, and Dimensions for Narrative Reporting(PDF)
- Narrative Reporting in Oracle Cloud EPM(データシート)
- 認定試験一覧(オラクル日本)
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